Oishii(delicious/sedap) has 3 contents, Science, culture and nostalgic. The most important for me, it is culture.
タイピン地区のホーカーストア/ホーカーセンター(屋台街)。ココナッツミルクを使った蒸し立てのおやつを切り分けるご主人
先日、Webサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の「水野仁輔さんってどんな人?」という記事を読んで、なるほど!と思った。
とくにこのページ。水野さんは、カレーのおいしさについて、こう分析している。「結局カレーって、さまざまな要素が、おいしさに影響を与えるんです。まず「サイエンス」と「カルチャー」の側面があって」。
カルチャーとは、インド人がインドで作り続けてきた伝統的な調理法でうみだされるおいしさ。それは、インドの気候や風土、その土地でよく育つ野菜やよく採れる魚などの食材、そしてインド人の生活習慣。そのすべてに関連性をもちながら形づくられてきた味。
それにたいしてサイエンスとは、今、この場所で、この瞬間のおいしさを追求すること。たとえば、日本ではインドの食材は手に入らないし、もしかしたらインドよりもおいしい食材があるかもしれない。簡単においしく作れる調理器具なんてのもあるかもしれない。それらを駆使して、いってみれば“絶対的なおいしさ”を追求すること。それがサイエンス。誰が食べても「これ、おいしいよね」といわれる味というのは、たしかにある。
このふたつは、今まで意識してなかったけど、けっこう相容れないものなのだ。水野さんは「そこを混同しはじめると、おかしくなるんです」「どこに軸を置くかで、「おいしい」の正解は変わってくるんです」という。そうそう、たしかに!
さらに、もうひとつ。「わたしのために4時間がんばってくれたからおいしい、といった「思い」の部分も絡むじゃないですか」(水野さん) 「あるねえ。「お袋のカレー」とかもそうだよね」(糸井さん)
この「思い」の部分を糸井さんは「ノスタルジック」と名づける。
つまり、おいしいには、カルチャーとサイエンスとノスタルジックの3つの要素がある。どれをいちばん大事にするかで、そのおいしさは変わってくる。
この記事を読んで、わたしはどうなのだろう、と考えてみる。
わたしが大事にしているおいしさは、第一にカルチャーだ。
マレーシア人が、どのような味をおいしいと思うか、それを知りたい。なぜなら、その味には、マレーシアの歴史、文化というマクロな世界から、人々の生き方や思いや生活習慣といったミクロの世界まで、そのすべてが詰まっているから。マレーシア人の考えるおいしさをひとつひとつひも解いていくことで、マレーシア人を、その先につながる世界の人を、もっと近くに感じたい。それを伝えていくことで、まわりのみなさんにも、マレーシアを、世界を、近くに感じて欲しいと思っている。
思い出すのは「イカンマシン(塩漬け魚)」。私は、もともと梅干しや明太子のようなご飯のおとも系が好きなので、このしょっぱいイカンマシンは好みの味なのだけど、100人が100人とも絶賛する味か、といわれたらハテナだ。でも、このイカンマシンは、マレーシア人の生活を支える、なくてはならない味である。
そのことを教えてくれたのは、元・海外青年協力隊の井上さん。インタビューのなかで、イカンマシンについてこう語ってくれた。
「(マレーシアに)派遣された当初は毎日だるくて仕方がなくて、ちょっと参っていたら、村長が「塩分をとってないからだ。イカンマシン(干した塩魚)を食べろ」と。たしかにTシャツに塩がつくぐらい毎日汗をかいていたので、村長の言葉通り、意識的にイカンマシンを食べるようになったら、あっという間に元気に! さすが村長」
この言葉を聞いてから、わたしはイカンマシンが、さらに好きになった!こういう体験をたくさんしたい。
次に大事にしたいのは、ノスタルジックだ。
私にとってのおいしいノスタルジックとは、過去の思い出。人が“おいしい”と感じるのは、なにかしら過去に経験した味や匂いが、無意識の層に残っていて、その部分を刺激するからではないか、と考えている。
たとえば、わたしがマレーシア料理のパンミーが好きなのは、幼いころよく食べたおばあちゃんの「だご汁」によく似ているからだ。ベトナム料理のバインミーにすごく惹かれるのは、これまた実家のお好み焼きにそっくりだから。
でもこのことをわたしはずっと気づいていなかった。なんとなくパンミーが好きで、なんとなくバインミーが好きだった。どうして好きなんだろう、と考えていたら、ふと子どものころの記憶がよみがえって、これだーっ!と思ったのだ。
だから、みなさんも、初めて食べたのになつかしい味やみょうに好きな料理があったら、じぶんの記憶をたどってみて欲しい。あなたが大事にしている思い出が、ひょいと顔を出すかもしれない、いや、かならず顔を出す。
ということで、わたしのおいしいの軸は、カルチャーとノスタルジック。そして、ときどきサイエンス。水野さん、糸井さん、わたしのおいしい軸をクリアにしてくれるキーワードを届けてくれてありがとう。
この記事へのコメントはありません。