マレーシアのリアルな台所&生活事情(今回は、祭事の儀式について)。華人系の嫁タンマリが、ごはん記録を通して、現地で暮らして感じたこと、自分のなかの変化、周りの人との関係などをつれづれに語ります。
日本人タンマリ。ダーリンは華人系マレーシア人。2018年の4月1日より、ダーリンの実家であるマレーシアのジョホールに子ども3人と移住。義父(タンpapa)、義母(タンmama)、義姉、長女8歳、次女5歳、坊3歳と計7人暮らし。ダーリンは日本で仕事。
この連載について / タンマリと家族のプロフィール
Tanmari’s food diary in Johor,
日用品やお菓子、料理をお供え。前日から用意をし、当日は朝から決まりごとがある大切な儀式
2nd Sep. 2020 : Hangry ghost, how to pray
text and photo by Tanmari
テーブルのうえのお菓子や日用品、めっちゃ豪華でしょう? これはすべてハングリーゴースト*のお供えもの。前回は料理(こちらもぜひ!)について紹介したので、今回はお供えのルールやお参りの方法について紹介します。いろんな決まりがあり、これがとっても興味深い! (*毎年、旧暦の7月は死者の霊が現世をさまようと考えられていて、その霊をとむらう儀式)
朝9時にお供えをスタートさせなければならないので、早朝からみんな大忙し。料理もすべて、この時間までにテーブルに並んでいる必要があるのだ。
準備が整ったら、庭に線香を立ててお参りし、紙銭を数枚燃やして霊をお迎え。この日は、線香をずっと燃やし続ける必要があり、これは霊に“運賃を渡す”こと、また“煙をたどってわが家に来てもらう”という意味がある。
それから霊の食事タイムになる。
テーブルには、霊のための席(今回は3席)を用意する。これから3時間ほどこのままの状態。この間、席を横切ってはいけない、たとえ料理にハエがとまってもはらってはいけない、などのルールがある。はらうのがNGなのは、もしかしたら霊の頭を叩いていることになるかもしれないから。そうそう、この料理は調理中に味見をすることも厳禁。霊が食べる前に、人間が料理を食べてはいけないのだ。
正午ごろ、赤い半月型の木の板を投げて、食べ終わったかどうかを霊に聞く。それぞれ表と裏になったら「食べ終わった」という印。それから、ようやく私たち人間の食事になる。料理はいったん台所にさげられ、一度加熱、味を調えてから、また食卓に並びぶという段取りだ。
みんなひとりずつお参りをする。長女、坊も神妙な顔つき。地面にひざまずくので、痛くないように新聞紙を敷いている。
テーブルには、お供えものがずらり(写真は9月10日のもの)!
お菓子、乾麺、フルーツ、調味料、お酒などの食品から、トイレットペーパー、歯磨き粉、洗剤などの日用品、お供え用の紙銭や三角の旗まで。これらの商品はすべて新品の必要があり、数日前に家族総出で買いものをした。これらは、霊に“あちらの世界でお使いください”という意味で並べるのだが、実際にどんなものを購入するかというと、私たちが日常に必要なもの。坊にいたっては、この時とばかりに、自分の好きなお菓子をねだっていた。
さて、この9月10日の儀式。今年はコロナ渦の影響でわが家で行ったが、例年は、地元の公民館での盛大なお祭りになる。お供えものとして丸一匹の豚や山羊が鎮座。チャイニーズオペラもやっている。
こちらが昨年(2019年)のお祭りの様子。
お供えもの豚は、頭にナイフを突き刺し、オレンジを口に加えている。山羊も同じスタイル。これが正装だ。そして、訪れた人たちは、食用肉として好きな部位を買って帰ることもできる。
ハングリーゴーストの料理はたくさんお肉が出てくるなど、とても豪華。そのため、昔は、このご馳走を1年で1番の楽しみしていた人も多かったそうだ。ただ最近は、みんなご馳走にも慣れ、盛大に行う家はごくわずかという。わが家のような田舎で、ようやく伝統的な儀式が残っている程度らしい。
こちらは、今年のわが家。最後の儀式として、紙銭を焼いてお見送り。
ちなみに、3人の子どもたちは、塾をお休みできるし、いとこと遊べるし、この日をとても楽しんだようだ。わたしも、日ごろ会えない親せきと話しができたり、みんなで料理を作ったリ、買いものに行ったり、忙しいけど楽しい。タン家やここにいる人たちは、こういう儀式を続けることで、親戚や近所のご縁を深めてきたんだな~と感じる今日のタンマリでした。END
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text and photo by Tanmari edit by Oto
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