マレーシア料理図鑑38/おかず/中級★★★★/マレーシア料理の奥深さを知りたい人/
マレーシアのおかず人気No.1はこれ! 香味野菜の甘みとココナッツミルクのまろやかさをきかせた鶏の煮込み、ルンダン。写真は、クアラルンプールのレストランで食べたもの
チキンルンダンを解説
コク、香り、が特徴の鶏の煮込み。マレーシアを代表する料理で、とくに国民食ナシレマに合わせる定番のおかずです。
シャロット、ニンニク、生姜などを油でじっくり炒めることで生まれるコク。レモングラスやコブミカンの葉の食欲をそそるさわやかな香り。ココナッツミルクを使ってリッチな風味に仕上げます。
コクまろ、辛さひかえめで食べやすく、鶏肉がゴロゴロ入っていて満足感も抜群です。
チキンルンダンはどうやって食べる?
うま味がギュッと凝縮した濃厚の味なので、ご飯によく合います。鶏肉は骨付きで、スプーンの端をナイフのように使って、骨を外しながら食べましょう。
チキンルンダンを初めて食べる人へ
スパイスとハーブの香り豊かなマレーシアらしい味であり、ポピュラー度は常にトップテン入り。ココナッツのまろやかさで食べやすく、万人に好まれるアイドルような味です。
さて、ルンダンによく似たチキンカレーとの見分け方を紹介します。まず、具が鶏肉のみ、ルンダン。シャロットなど香味野菜が入っていますが、それらはあくまでも調味料です。また、仕上げにココナッツフレークを加えるのがルンダン。濃厚な風味、香り、そして同時にとろみが加わり、汁が鶏肉によくからみます。
ミニエッセイ「ルンダン is Not Crispy」
大いに沸いたルンダン事件を紹介しよう。イギリスの料理対決番組「マスターシェフUK」(2018)にマレーシア人シェアが出場。対決内でチキンルンダンを作ったところ、あるひとりの審査員が「ルンダンはよく知っているが、皮がパリパリしていないのが残念」と。このコメントにマレーシア国民が猛反発。ルンダンなのにパリパリのはずがない、と声を挙げ、マレーシアのケンタッキー社が自社のフライドチキンに「NOT RENDANG」としてSNS投稿をするなど、大騒ぎに。話題のシェフはレシピ本を出版。タイトルは『My Rendang Isn’t Crispy』。マレーシア人のルンダン愛はすごい。
Memo
マレーシアを代表する料理なので、人気のマレーシア料理を提供しているレストランやローカルカフェなどさまざまな店で提供。屋台で食べるならマレー系の食堂がおすすめ。
◆補足◆ チキンカレーとルンダンの違い、もっと知りたい方へ(ちょっと長くなりますが解説)
1 チキンルンダンは汁が少なく濃厚で、チキンカレーは汁が多くサラサラなことが多いです。またルンダンは、仕上げにココナッツフレーク(ココナッツの実を削ったもの)を加えることが多く、これがさらに汁を吸い、鶏肉にからんでいます。
2 チキンカレーには、あらかじめパウダースパイスがミックスされたカレー粉を使うことが多いですが、ルンダンにカレー粉は使いません。つまり、比べるとスパイスの種類が少ない、ということ。とくにチキンカレーに必須のシナモンやクローブは、ルンダンには無し(もちろん店によりますので、基本的に、というお話し)。そのかわりに、レモングラスやこぶみかんなどのさわやかな香りをきかせています。(※ルンダンならではの食材詳細は、ビーフルンダンのページにも紹介)
3 チキンカレーにはじゃがいも(ときにオクラも)の野菜入りですが、チキンルンダンは鶏肉のみ。煮込むときに、玉ねぎや生姜などの香味野菜を加えていますが、それらはあくまでも食べるためではなく味つけの役割。野菜を入れないことで、ルンダンの保存性も高める目的もあるようです。
そのほか、チキンルンダンは酸味を加えてコクを出すこともよくあります。酸味はアッサムクピンとよぶ果実を乾燥させたもの。一方カレーの場合、魚カレーには酸味を加えますがチキンカレーには加えないので、ここもポイントです。
ここまでで相当長くなってしまったのですが、もうちょっと知りたい方へ、深掘りします。
「ビーフルンダン」との違いについて、です。
というのも、マレーシアのルンダンは、チキン、ビーフ、マトンの3種がポピュラー。もともとルンダンのルーツは、インドネシアのパダン地方といわれていて、そのインドネシアでは、ルンダンといえば断然ビーフだそう。
ところがマレーシアでは、チキンルンダンとビーフルンダン、どちらもよく食べます。どちらかといえば、チキンは普段の料理、ビーフはハレの日の料理という位置づけです。話はすこしそれますが、ルンダンと同じぐらい人気のマレーシア料理、串焼きサテー。これも1位がチキン、2位がビーフ or マトンです。つまり、他国に比べて、ビーフはあまり人気がないのです。実感として、以前ブルネイに取材に行ったとき、ビーフのサテーが市場でどんどん売られていて、ここブルネイに比べたら、マレーシアではビーフの人気がないなぁと感じたものです。
そこで、あらためて考えてみると、マレーシア人のなかには牛肉を食べない人がいることに気が付きました。たとえば、国民の人口の約7%を占めるインド系のヒンズー教徒。彼らにとって牛は神聖な生き物なのでビーフを食べません。また、約25%を占める中国系も、敬虔な仏教徒はビーフをあまり好みません。つまり全体の約30%がビーフを食べないので、チキンに人気が集まっているのでは、と思います。
ということもふまえて考えると、最初のチキンルンダンとチキンカレーの違い。チキンルンダンは東南アジアの煮込み料理(インドネシア由来の料理のチキン版)で、チキンカレーはインド由来のカレーといえそうです。ここまでいろいろ説明してきましたが、シンプルなひとことで説明がついてしまった…!です!
ちなみに、チキンルンダンとビーフルンダンのレシピを比べてみると、チキンの場合はターメリック(根や葉っぱ)がかならず入っていますが、ビーフルンダンには無いものも。なのでチキンルンダンは全体に黄色っぽく、ビーフルンダンは黒っぽい見た目です。
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