Pitcher Plant Lemang
見た目はインパクト大だけど、食べると普通においしいもっちりご飯
ボルネオ先住民の伝統食。ウツボカズラにもち米を入れて調理したもの
ツボのようにふくらんだ捕虫袋に虫をおびき寄せ、落ちてしまった虫を消化液で分解して吸収するという摩訶不思議な植物、ウツボカズラ。その捕中袋を使って調理したものが、ウツボカズラご飯です。
この料理に出会ったのは、サラワク州都クチンから車で40分程度、シニアワンにある人気の夜市。ウツボカズラというインパクトのある響きにドキドキしましたが、食べてみれば、普通においしい。ウツボカズラ感は、ほのかに感じる柏餅のような香りぐらい。ご飯の味は、まさに中華ちまきで、豚肉や鶏肉入りでボリュームもありました。持ち運びしやすいフィンガーフードで、手で葉っぱを剥いて食べる気軽さも楽しく、もしやパーティー向きの料理かも、と感じたしだい。
ただ、調べてみると、中華ちまきのような味は稀なようで、伝統的なウツボカズラご飯は、ココナッツミルクを加えて炊いたシンプルなもち米だそう。同じ味付けで、竹筒で調理するレマンがあり、どちらもボルネオの森の恵みを調理に利用した味のようです。
Memo その1
先住民が祝いの料理として自宅で作るもの。最近はめずらしい料理として注目されるようになり、上記の夜市のように一般向けの販売も。なお、森で自生するウツボカズラの袋が調理に使えるのは収穫後3〜4日以内で、手間とコストが非常にかかる。
Memo その2
「ウツボカズラご飯を作るのは、先住民のなかでもイバン族やビダユ族で、ケランガス(ヒース林)という植生(この種類のウツボカズラが多い)のある森の近くに住む人々です。祝い料理とよくいわれますが、先住民にとって大事なガワイの収穫祭でウツボカズラご飯がふるまわれるたのを見たことはありません。たぶん、日本であれば、山菜の旬の時期に山菜料理を楽しむ、のような感覚で、森に生えていたから調理しよう、という感じでは。ただ、このウツボカズラは年中見られるので、いつ食べるかという時期に関しては、つかみどころのない感じです」(サラワク州在住の観光のプロ、鍋島さん情報)
Photo
サラワク州、シニアワンの市場にて、2018年
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