茅場町で「パントゥン(マレーシアのポエム)」にであう
2013 年2月16日、快晴。冬晴れの真っ青な空が、まるで常夏のマレーシアの空にも見えた。八丁堀のマレーシア料理店「マレーカンポン」で、マレーシアごはんの会イベントを開催しました。
テーマは、この料理、イーサン。
イーサンとは、マレーシアやシンガポールで華僑のお正月(日本では旧正月や中国正月と言われる)に食べるお祝い料理。わたし、個人的にイーサン料理が大好きで、在馬中は毎年かならず食べており、日本に帰国してからもイーサンを食べ続け、今回でもう8回目。これぐらいイーサンを食べ続けていると、イーサンはお節のような存在で、イーサンを食べると年が明けたなぁ~という気分になります。
それにイーサンは、説明し始めるとキリがないくらい、由来や、食べ方や、意味がいっぱいあっておもしろいんです。たとえば、この時期にしか食べない特別料理なのに、メイン料理でなく“前菜”というのがすごいでしょう。中国正月で集まったら、まずみんなでイーサンを食べてから、メイン料理に移る。日本でいえば、お屠蘇と同じ位置にいるわけですね。
今回は昼、夜の二部制で開催。まずは中国系マレーシア人の乾杯、ヤムセン(飲勝)で幕を開けました。昼の部、マレーシア人のローさんが音頭取り。夜の部、マレーシア人のナイさんが音頭取り。
息の続く限り、できるだけ大声で、ヤーーーーーーーーと伸ばします。
ヤーーーーーーーー
まだまだー!
マごはん事務局のまゆちゃんが、マレーカンポンのリムさんが、もっともっと!と煽ります。できるだけ伸ばすことで長寿を祝い、福を呼び込むのです。
そして音頭取りの人と息を合わせて、セイ!といって乾杯。そしてさっそく本日のメイン料理、イーサンです。
イーサンは漢字で“魚生”と書き、生の魚つまり刺身がのった料理。生は、中国語でスタートの意味があり、一年の最初を祝うのにふさわしい料理なのです。ただ、刺身が重要な料理なのですが、マレーシア現地では刺身が苦手な人も多いので、どちらかというと形だけ。マレーシアのイーサンは味よりも楽しむ(FUN)ための料理。でもですね。日本のイーサンは違うんです。イポー出身のシェフ、チャーさんが真心こめて作った味。極細に切った山芋に緑と赤い色をつけて揚げたりするので、なんと下処理だけで2時間! サーモンの刺身は新鮮で厚切りだし、イーサンに限っていえば、マレーシアのよりも日本のほうがおいしいんですよね~。
イーサンの何が楽しいかというと、みんなで作ることなのです。こんなふうに同じテーブルの人がひとつのお皿を囲んでみんなで箸で混ぜる。せ~のっ
できるだけ高くあげる。そして高いところから落とす。テーブルのうえが散らかっても大丈夫。むしろ散らかった方が縁起がいい。高いというのは、高学歴、高収入、長寿などいい意味なのです。リムさん、背伸び中。口々に願い事を言いながら混ぜます。彼氏~!結婚相手~!お金持ち~!マごはんの会の発展~!
いい笑顔で願いをこめる。そしてひとしきり混ぜたら、いただきます!
今日のメニューはこちら。まず、レタスのおひたし。レタスは中国語で“生菜”と書き、イーサンと同じようで“生”が入っているので、お正月に食べる縁起のいい食材。中国正月の時期は、クアラルンプールのレタスの値段が倍以上になります。
客家惣菜。醤油ベースで甘辛く煮たゆで卵と厚揚げ。お酒にぴったりの濃口おでん。
チャーさんの出身地であるイポーの名物料理。ゆで鶏ともやし。やわらかな鶏肉に醤油ベースのあっさりタレ。鶏の茹で汁で炊いたジャスミンライスとともに。揚げ魚のあんかけ。丸ごと1匹、お頭付きで揚げるのが縁起がいい。ただ昼の部は仕入れた魚が大きすぎて身をカットして提供。カリッと上がった魚のうまいこと!中国正月と言えば、みかん。オレンジ色が神々しい!
デザートはタピオカのお汁粉、そして年餅のココナッツのせ。
今回はイベントももりだくさん!マレーシアをテーマに、皆さんに俳句を作っていただきました。じつはマレーシアにも、「パントゥン」というポエムのようなものがあって、韻を踏んでいるのだそう。みんな国語の授業で習うそうです。4つの文で構成されていて、1と3文目、2と4分目の文末が韻を踏む仕組みだそうで、ストーリーとしては1と2文、3と4文がつながっていて、言いたいことは3と4文なのだそう。
パントゥンを教えてくれたシャヒルさん。
たとえばこんな感じ。
Buah cempedak di luar pagar
Ambil galah tolong jolokkan
Saya budak baru belajar
Kalau salah tolong tunjukkan
ジャックフルーツの実 垣根の外に。
竿でつついて落としてよ。
私は子供、学びはじめたばかり。
間違えたら教えてね。
伝えたいことは3行目の私は子供~の部分で、ジャックフルーツの2行は韻を踏むための遊び言葉なんだそう。1と3のおわりが、arになっていて、2と4のおわりがkanになってますよね。
Kalau ada sumur di ladang
Boleh saya menumpang mandi
Kalau ada umur yang panjang
Boleh kita berjumpa lagi
畑に井戸があれば
水浴びができるね
長生きすれば
いつかまた会えるでしょう
1と3がang、2と4がi。こちらはkalau、bolehも韻をふんでます。あの有名なラササヤンの歌にも出てきます。おもしろい!!
そしてこちらが、皆さんが作って下さった俳句です。発表じゃじゃーん!
ウシゾーさん作のマレー語の俳句を解説してくれるディンさん。
優勝はこちら!
・古希の祝 キナバル山を 制覇する (昼の部)
・sudah makan? Tidak boleh makan Saya kenyang (夜の部)
入賞作品はこちら!
・ジャランジャラン ナシレマロティ アイスカチャン
・マレーシア 人も気候も 同じかな
・マレーシア ああマレーシア マレーシア♡
・イーサンと ライオンダンス 旧正月
・夕暮れだ アザーンの声で いただきます
・きさらぎの イーサン囲み 国想う
・僕はディン イケメンだから ミーが好き
・イーサンに 願いをこめて 箸高く
・デザートと 英語の基本は ABC
・イーサンと 言ったら同僚 振り返り
・テリマカシ 幸せくれる マレーシア
・食いしん坊 忘れないでね サヤラパー
どれも素敵な作品で拍手~~!マレーシアの景色が浮かんでくるようです。
次はマごはん事務局メンバー、また世界1のマレーシア好きとして活躍している三浦ナオちゃんの“マレーシアのカンポンステイ”レポート。
カンポンとは田舎のことで、マレーシアの田舎町にホームステイをしたお話しをしてくれました。まるで田舎のおばあちゃんに会ったようなあったかい空気感のある写真が並び、参加者も興味津々。アンケートに「カンポン話、ステキでした!」書いてくださった方も多かった。
そしてマごはん初!!マレーシア現地とスカイプでつないで、福ちゃんにレポートをしてもらいました!
お昼の部は回線がうまくいきませんでしたが、夜の部は見事に成功!マレーシアの中国正月の写真を見せながらレポートしてくれた福ちゃん、本当にありがとう!! カメラでマレーシアの空が映った時は、みんな感無量。またぜひよろしくお願いします。
今回イーサンを食べながら、マレーシアにいた頃の自分を思い出していました。同僚とわいわい丸テーブルを囲んだ、やさしくて、愛おしい時間。あの時間があるから、わたしはこんなにもイーサンが好きなんだと思いだしました。
わたしにとっての“おいしい”は、常に思い出とともにあります。思い出というのはかならず、そこに一緒にいてくれた友人や家族の笑顔があります。思い出があるから、その食事はおいしいんです。
今回イーサンの会に参加してくれた方が「去年のイーサンのおかげで、小さな夢が叶いました!」と言ってくれて、とても嬉しかった。マごはんの会のイベントに参加してくれることで、みんなの思い出ごはんが1つずつ増えていきますように。そして今日のこの記憶がみんなの“おいしい”思い出にインプットされますように。音
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