Malaysian sweets‘Nyonya Kuih’at MOH TENG PHEOW NYONYA KOAY shop in Penang
マレーシアはスイーツ天国。町のいたるところで色んなお菓子に出会えます。蒸したり、焼いたり、揚げたり、茹でたり、包んだりと調理法はじつに多様。素材にトウモロコシや紫芋、干し海老を使うなど、味のバリエーションもピカイチ! そのなかで、マレーシア人が愛してやまないのが、生のココナッツを使い、フレッシュな材料でつくる「ニョニャ菓子」。カラフルな見た目に最初はびっくりするかもしれませんが、食べてみれば、甘さひかえめで和菓子にも通じる素朴な味わい。今回は、ペナンにあるニョニャ菓子店「Moh Teng Nyonya Koay」をレポートします。
プラナカンのつくるニョニャ菓子
ニョニャ菓子とは、15世紀ごろにマレー半島に移住した中国人の子孫、プラナカン民族がつくるお菓子の総称です。移住した当初は、現地で暮らす女性(マレー人など)と婚姻したため、マレー半島と中国の文化が混じりあい、お互いのいいところどりとでもいいましょうか、たいへん洗練されたお菓子文化が生まれました。
ニョニャ菓子は、南国菓子ならではのココナッツを使ったものが多く、天然の色素でカラフルな見た目に仕上げます。また、ほとんどのニョニャ菓子は日持ちがしないので、その日のうちに食べてしまうのが鉄則のフレッシュ菓子。だからこそ、マレーシアでぜひ味わってほしいお菓子なのです。
ここ「Moh Teng Pheow Nyonya Koay」は、ペナンの中心地ジョージタウンにあります。朝6時から仕込みを開始し、10時半に店をオープン。作りたてのニョニャ菓子がその場で食べられるとあって、地元で大人気! シンガポールからはるばる食べに来る人もいるそうです。
美しいニョニャ菓子を紹介
この店で販売されているニョニャ菓子はこちら。
手前中央。緑と白のツートンカラーは「Kuih Seri Muka/クエスリムカ」です。上の緑はパンダンリーフの絞り汁で香りをつけたカスタードのような甘い層。白い部分はもち米で、マレーシア版の“おはぎ”です。
その右、今度は白が上で緑が下のツートンカラーは「Kuih Talam/クエタラム」。米粉やタピオカ粉を、水またはココナッツミルクでねって蒸したもので、やわらかな羊羹のような食感です。白いのはココナッツミルク味(ほんのり塩気もある)、緑はパンダンリーフ味。ほどよい甘さで食べやすいです。
右後ろ、紫色は「Kuih Bengkak/クエブンカ」。ブンカとは芋のことで、これは紫芋を使ったお菓子。ぷるんとした弾けるような食感で、芋の香りがふくよかに広がります。
その左隣り、黄色は「Kuih Ubi/クエウビ」。タピオカ粉の原料であるキャッサバを使った菓子で、やさしい甘みがあります。たとえるなら芋ようかんに近いかも(とくに見た目)。
その左、表面がオレンジ色に輝いているのが、人気No.1の「Kuih Lapis/クエラピス」です。名古屋のういろうによく似たもっちりとした食感で、甘さひかえめの蒸し菓子。白とピンク(または緑のこともある)のしましま模様が特徴。ただ層によっての味の違いはありません。合計9層にするのが伝統的といわれていますが、この店ではなんと約20層に仕上げているとか。作る工程は、一層ずつ蒸し重ねていくので、たいへん時間がかかり、根気のいる作業です。
ほかに、なめらかな団子「Kuih Kochi/クエコチ」、ココナッツ入りの糯米「Pulut inti/プルインティ」もおすすめです。
取材時、これらのお菓子は1個50セン(約15円)で販売。ちなみに、上の写真のクエを2人でぜんぶ食べましたが、ペロッといけました! サイズがこぶりで、甘さひかえめで上品な味なので、あれもこれも食べても大丈夫。
ニョニャ菓子の調理風景
さて、この店では約20種のニョニャ菓子やおやつをここで手作りしています。たとえば「クエラピス」は、丸いトレイで約300個作ることができ、毎日トレイ1個分を仕込んで、それを売り切ったらおしまいという商売。
1970年に創業した父のレシピをほとんど変えることなく「質のいいココナッツミルクをたっぷり使うこと。ニョニャ菓子の味は、素材の質が大事です」とMook社長が教えてくれました。
また、ここのニョニャ菓子は、ひと口サイズの小さめのものが多いのですが、これこそがプラナカンのつくる伝統的なニョニャ菓子。小さなサイズで美しく、おいしく仕上げるのは、大きなサイズで作るよりもずっとずっと難しく、高い技術が必要なのです。
またペナンでは、結婚のセレモニー内にニョニャ菓子をふるまう(新郎が新婦の家に迎えに来たときに用意する)という慣習があるそうで、結婚式シーズンは大忙しだそう。
すべて公開する、というオープンさ!
もうひとつ、この店の特徴があります。ここに買いに来た人はみな、お菓子作りの様子を見学することができる、ということです。というのも、調理場の奥にお店があるので、働く職人の間を通らないと、お店にたどりつけない。丁寧に作られている工程を見ながら、できたての菓子を購入する、という贅沢さ。いやがうえにも期待が高まり、あれもこれもと買ってしまうのです。
この店は、Mook社長のファミリーを中心に運営されていますが、勤続40年、この美しいクエを作り続ける職人がいます。
カナンさん、インド系のマレーシア人です。息子のBJさん(写真上、クエラピスを作っている人)も、この調理場でお父さんと一緒に18年働いています。昔、プラナカンは、自分たちが作ったニョニャ菓子をインド系民族に行商してもらっていた(籠に入れたニョニャ菓子を売り歩いていたのだそう)という歴史があり、その流れなのかもしれません。また、もち米のお菓子「Pulut Tai Tai」は、ギュッとふみ固める工程があるのですが「これは男性だけができる仕事なんだよ」とBJさんが教えてくれました。
取材を終えて、こんなことを考えています。
マレーシアで取材をしていつも感じるのは、マレーシア人のオープンさです。きっと話しにくいこともあるだろうに、こちらが質問したことには、ほぼすべて隠し事ごと無しで教えてくれます。
さらにこの店では、訪れた人すべてが伝統菓子作りの工程を見ることができる、という究極のオープンキッチンになっていました。隠し事は一切なし。その潔さに、ものすごく惹かれました。
マレーシア人やこの店が、こんなにオープンなのは、毎日たえまない努力をしている、という本気度の表れだと思う。オープンにできるのは、その味が、その人のやっていることが、誰にも真似できない、という自信があるから。たとえこの店のレシピで誰かが同じように作ったとしても、それは真似でしかない。そのことをMook社長は知っているのです。
Oto Furukawa(Malaysia Food Net)
May/2016 取材
Moh Teng Pheow Nyonya Koay
https://www.facebook.com/penangnyonyakuih/?fref=ts
住所: Jalan Msjid (Off Chulia Street)
Tel: +60 4 261 5832
Opening Hours 10:30am – 5pm, Monday Closed
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