麺好きなら、マレーシアは天国です Malaysia is Noodle Paradise!!
マレーシアの麺 mee は、びっくりするほど種類豊富。その麺を図にしてみました。右半分が小麦麺。左半分が米麺。上にいくほど「汁多め」で、下にいくほど「ドライ、炒め」です。
麺の種類は米麺と小麦麺のおもに2種。汁多め、汁とろみ、ドライ、炒めと調理法は多彩で、どれもまんべんなく人気(上の図は4月6日にUPした図の更新版です)。
マレーシアの麺は、漢字併記のものが多数あるように、中国由来といわれています。そこに、東南アジアらしい唐辛子やスパイスなどの食材が加わり、多様な味に。さらに、調理法に汁なしのドライ麺(タレあえ麺)が多数あるのは、暑い気候でもサッと食べられる常夏ならではの工夫。
アジア各地に多彩な麺文化がありますが、そのなかでマレーシアらしさをひもとく5つのポイントをまとめてみました。
1 麺の種類は?
米麺と小麦麺が主流。米麺の製法は4つで、水で溶いた米粉の生地(昔は米を水に浸して臼でひいたもの)をシート状に伸ばして蒸し、幅1~2センチに切ったもの(料理名:ホーファン、クイティオetc.)、切らずにくるっと巻いたもの(チーチョンファン)、生地を適度に丸めて押しだしたもの(ラクサ)、雲吞の皮ぐらい大型に切ったもの(クエチャップ)。一方、小麦麺の製法は、拉麺のような手延べ式(ワンタンミー)に加え、板状にして均等幅にカットしたもの(パンミー)、すいとんに近いもの(パンミー・ちぎり)、そうめんタイプ(ミースア)がある。
2 米麺か、小麦麺か? (タイとの比較で考察)
隣の国タイでは、米麺のほうが、小麦麺に比べてポピュラーだそう。ところがマレーシアでは、表をみてわかるように、どちらも同じぐらい人気。たぶん、19世紀に渡ってきた中国移民がもちこんだ麺が小麦タイプが多く、そのままマレーシア料理として定着したのでは、と思われる。とくに「ドライ」(タレあえ麺)で小麦麺をよく使い、とても人気になっている。ただ、地域性があり、ペナン州やケダ州などマレー半島北部では米麺の人気度が高く、南下するほど、小麦麺がポピュラーになる傾向があるようだ。ちなみに、マレーシアの米の自給率70%で、小麦粉は輸入している。
3 麺の名前を分析
マレーシアでは麺のことを「ミー mee」とよぶ。ただ料理名になると、ミーは小麦麺のことを指し、米麺は「クイティオ/ビーフン」のように麺の種類が名前になる。名前の構造は、麺の種類+「チャー/ゴレン(炒める)」などの調理法、または「サラワク/ケダ」のような地域名、または「ビーフ/プロウン」などの特徴的な味つけになっている。
メニュー表に漢字が併記されているところは中国系が店主ということ。このとき漢字に「面」とあれば小麦麺、「粉」は米麺である。なお、米麺の代表格「クイティオ」は、福建語の「粿條」の発音がルーツで、粿はクエ(米を加工したもの)、條はティアオ(ひも状のもの)のこと。また、メニュー表に記載されている料理名としては1つでも、汁ありか、汁なし(ドライ)が選べたり、好みの麺を選べたりするので、もはや麺の種類は無限大といってもいい。
4 スープかドライ(汁なし)か (インドネシアとの比較で考察)
隣の国インドネシアでは、いわゆる日本のラーメンのようなスープたっぷりの麺はメジャーなものとしては少ないそうだ。タレあえ麺や炒め麺が主流だという。一方、マレーシアは、スープたっぷりの麺は多い。ワンタンミー・スープ(鶏ガラ)、パンミー・スープ(煮干しだし)、フィッシュヘッドヌードル(魚頭だし)などの透明スープから、カレーミーのような濃厚カレースープまで多種。このあたりは、中国のスープ麺文化をそのまま受け継ぎ、マレーシア人の嗜好にも合っているようだ(カレースープ自体は独自で発展)。ほかにも、炒める、タレあえ、汁かけ、餡かけ、など、さまざまな調理法があり、マレーシア人の麺にかける情熱はすごい。
5 ラクサについて
麺料理「ラクサLaksa」。マレーシア麺の代表格であり、マレーシアならではの麺文化を表している。というのも、マレーシアのラクサは、日本のラーメンと同じように地域によって味が異なるご当地麺。ラクサのスープは大きくわけると2種で、魚だしをベースに酸味(Asam)を加えたさっぱり系と海老や鶏のスープにココナッツミルク(Lemak)を加えたクリーミー系がある。どちらも唐辛子入りで刺激的な辛さがある。具は海老、鶏肉、魚のほぐし身、卵、魚団子など。 ※詳しくは、こちらの記事「マレーシアごはんの会 ラクサ事情」にて。
さて、どうしてこのような地域差があるのかというと、英国占領下になる19 世紀以前のマレーシアは、ひとつの国ではなく、小さな王国の集まりに近い状態であったため、地域ごとに食文化(食の好み)が異なるから。もうひとつは、手間のかかるスープ麺といえども、たとえば「ケダ・ラクサ」「ジョホール・ラクサ」「ニョニャ・ラクサ」など家庭で作ることも多く、ハーブの種類や辛さなど家庭ごとにアレンジして仕上げるから。
まとめると、マレーシア人にとって麺とは、専門の屋台で食べるものであり、ときに複雑なスープから家で作るものでもある。また、朝食に麺を食べるのはあたりまえで(とくに中国系)、間食にも夜食にも、また、ご飯がわりにおかずと合わせることもある。唐辛子で味変したり、炒め麺にスープをたらしたりと、自分好みにアレンジするのもしょっちゅう。つまり、マレーシア人と麺の関係は、わたしたちが考えるよりもずっと近い。その近さが、このような多彩な麺文化を育くんでいると思う。
★こちらもよかったら。
note 記事「マレーシアの麺料理が楽しいわけ。」 :日本にいるときより3倍麺活をするのはおいしいのと、もうひとつ。
note 記事「マレーシアのすこぶるおいしい麺。」 :米麺の心地よさは餅に通じる、という発見。
note 記事「麺から気づいた、わたしがマレーシアを好きな理由。」 :パンミーとだご汁の共通点。