Teh Tarik
料理に合うんだな~これが。ぶくぶく泡のミルクティー
心身の疲れを癒したいとき。テタレでホ~ッとリラックス
「マレーシアでいちばん人気のドリンクは?」と聞くと、100人のマレーシア人が100人とも口をそろえて答えるのが「テタレ」。紅茶にコンデンスミルクを加えたミルクティーで、まろやかでリッチな甘みが特徴です。はじめて飲んだときは、こりゃかなり甘いな~と思ったものでしたが、気がつけば、いつの間にかわたしも立派なテタレ・ラバーに。というのも、マレーシア料理にテタレはよく合うんです。辛いサンバルソースで食べる「ナシレマ」やカレーソースをつける「ロティチャナイ」。これらのスパイシーな食事にテタレを合わせれば、辛くてヒッ!となっても、すぐに甘さでホッ!となれて、すごく良い。また、甘・辛・甘・辛のループで、最後まで食事がおいしく楽しめます。さてテタレとは、テ(Teh)は「紅茶」、タリ(Tarik)は「引く」という意味。提供する際、ふたつのコップを使って数回移し替えるのですが、その動作が、紅茶を“引いている”ように見えるので「テタレ」。インドのチャイの淹れ方にもよく似ています。空気でマッサージされたテタレは、舌触りなめらかで、温度も適温。できるだけ高い場所から、もう一方のコップに勢いよく落とし、コップの表面にぶくぶくと美しい泡がたてば、最高のテタレに。この泡は、テタレ職人の見せ場なのです。
Memo1
テタレは温かいのが基本。なので「テタレください」というとホットが出てくる。冷たいテタレを頼みたい場合は「テ・アイス」、甘さをひかえたいときは「テタレ・クランマニス(クランはひかえめ、マニスは甘い)/ テ・アイス・クランマニス」になる。ちなみに、引くというマレー語がのスペルが Tarik(タリ) なのに、テタレでは“タレ”と発音しているのは、むかしのスペルがTarekでその名残りらしい。
Memo2
マレーシア人は紅茶が大好き。それは、19世紀のイギリス統治時代、紅茶好きのイギリス人が茶葉園が作り、現在もマレー半島中部の「キャメロンハイランド」、ボルネオ島の「サバ州」で茶葉を栽培していることに関係している。そしてテタレも、イギリス人統治時代に移り住んだインド人が持ちこんだ「チャイ」にルーツがあるようだ。ところがテタレではスパイスを使用しない(こだわり派で使うこともある)。それはマレー半島ではスパイスが高価だったため、という説がある。スパイスを使用しなかったがゆえに、インド系以外の民族、マレー系や中国系にも受け入れられ、マレーシアの国民的ドリンクになった、ともいわれている。
Memo3
テタレはどこでも飲めるが、テタレを引くという動作を見せてくれるのは、インド系民族が経営する食堂「ママッ・ストール」。ストールとは店、ママッとはインド系民族のイスラム教徒のことを指す。彼らが作るテタレがいちばん美味、というマレーシア人もいる。
Memo4
なぜ、ミルクではなく、練乳を使うかというと、保存が楽ちんだから。つまり、ミルクのように冷蔵保存が必要なく、常温で、かつ長期間保存できる。暑い国の屋外屋台での提供に向いているのだ。最近は、練乳の価格高騰のため、練乳ではなくエバーミルクと砂糖を使うことも多い。エバーミルクのほうが練乳よりも泡が立ちやすい、というメリットもあるようだ。なお、練乳そのものがどういう経路でマレーシアの食文化に取り入れられたは現在調査中。マレーシアではスイスに本社をもつネスレ社の「ミロ」もドリンクの定番で、このあたり国がもしかしたら…とも考えたりしている。ひきつづき調査中!
Photo
ジョホール、1.5リンギット(1杯)、2015年
●CREA web 連載にもコラムを書きました。 「手タレ」じゃないほうの「テタレ」はマレーシアの甘~いミルクティ
この記事へのコメントはありません。