“アジア版ビーフシチュー”ともいわれるコク深い味でご飯がすすみまくる。祭りに欠かせないおめでたい料理。写真のビーフルンダンは、クアラルンプールのナシレマッ店で撮影
ビーフルンダンを解説
スパイスやココナッツで煮込んだ、お肉ごろごろ、濃厚な味の料理です。
多数のスパイスと肉、そして煮込む時間が長いので、調理費も手間もかかります。そのためハレの日に登場することが多く、食卓に並んでいると「おっ、ルンダンがある!」とテンションが上がる存在です。
肉の種類は、牛、鶏、羊。とくにビーフ(牛)ルンダンは、結婚式やラマダン明けの祭りのような祝いの宴に欠かせません。和食でいうならお頭付き鯛、のような存在です。
ビーフルンダンはどうやって食べる?
味が濃厚なので、ご飯に合わせます。うるち米、またハレの日に食べるもち米にもぴったり。たとえばターメリックやココナッツミルク味のもち米に合わせます。
ルンダンを初めて食べる人へ
ルンダンは、インドネシアのパダン地方が発祥の料理で、そこからマレーシアに伝わった味です。
そのため、インドネシア、マレーシア、そしてお隣シンガポールでも人気。東南アジア各地や世界を俯瞰すると国が違っても、同じ料理が、同じように食べられていることが多数あるんですよ。
ちなみに、マレーシアのビーフルンダンは、1 肉ごろごろ 2 肉の繊維がほどけたフレークタイプ 3 汁気が無くなるまで煮詰めた乾いたもの(長期保存が可能。ふりかけのようにして食べるスルンデンと限りなく近づく)があり、提供するシチュエーションや地域によって違います。
ミニエッセイ「ルンダンとカレー」
スパイスやココナッツミルクを使って調理をするので、日本では“カレーのような料理”と表現されることが多いルンダン。マレーシア人にとって、ルンダンとカレーは明らかに別もので、彼らにとってルンダンはカレーではなく「煮込み」という(カレーは極端にいうと炒めもの)。そして最近、発見した! 煮込みよりもわかりやすいマレーシアの“ビーフ”ルンダンとカレーの違い。じつはシンプル。マレーシアのカレーは、南インド由来でヒンドゥー教徒向けが多く、彼らにとって神聖な動物であるビーフは使わない。つまり、ビーフを使ったグレービーな料理は、イコール、ビーフルンダンである。
Memo
2017年、アメリカの放送局CNNが世界でもっともおいしい料理としてルンダンを発表した。このときルンダンはインドネシア料理として紹介されているが、マレーシアやシンガポールでも、ルンダンはとってもポピュラーな料理。
Memo
ルンダン(レンダンと発音する人もいる)は、ビーフ、チキン、マトンのおもに3種類。ビーフルンダンのレシピはさまざま。レシピ本『Nasi Lemak by Puan Sri Betty Saw』によると、なんと7種ものビーフルンダンのレシピが紹介されていた。見ためはどれも、牛肉ごろごろの煮込み。使うスパイスやハーブの種類が異なっている。有名なビーフルンダンは「ルンダン・トッ / Rendang Tok」。マレー半島内陸部のペラ州のルンダンで、黒っぽい見ためが特徴。ほかのルンダンに比べてスパイスの種類が多く、胡椒の香りもポインドらしい(いつか食べてみたい!)。
Memo
カレーとルンダンの見分け方、カレーは肉以外の具が多少あるが、ルンダンはない。グレービーの濃度はカレーよりも高い。
Memo
以前、料理教室で、ペナン出身のアスリシェフにビーフルンダンを習ったところ、カレーにおなじみの乾燥スパイス(たとえばコリアンダーやクミン)はひとつも入っておらず、ハーブはレモングラスやこぶみかんの葉のみで、ひじょうにシンプルな食材で驚いた。このように、ルンダンに使う乾燥スパイスは、カレーに比べて少ないと思われる。そのかわりに多数の生のハーブ(レモングラスやこぶみかんの葉など)を使う。また、ルンダンにほぼかならず入っている食材が、ガランガー、レモングラス、クリセの3つ。ガランガー Galangal(マレー語はルンクアス Lengkuas)とは香りのいい生姜のこと。レモングラスとともに東南アジアの料理に必須の食材です。クリセは、ココナッツの実。あらかじめ削ったココナッツの実を乾煎りし、臼でたたいて濃厚な香りと油分をひきだしておいたもので、これを調理の仕上げに加えることで香り豊かになり、ソースにとろみがつく。そしてもうひとつ、いろんなレシピ本を見てわたしがほーっと思ったのは、ルンダンの調味料に砂糖が入っていること。アスリシェフのレシピにも、黒砂糖(現地では椰子砂糖を使う)が大さじで入っていた。これもルンダンの特徴のように思われる。
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