Report : Makan Makan tour 2017 in Malacca
2017年10月、第6回目となるマレーシアごはんツアーで、マラッカに行ってきた。ホテル・プリに3泊し、現地滞在4日間の日程で、朝・昼・晩・おやつとマラッカのおいしいもの三昧。また、ニョニャ料理教室に参加し、アフタヌーンティーを優雅に体験し、マラッカで暮らすマレーシア人にふだんの食生活や文化ついて話してもらうなど、おいしい味だけでなく、人や文化にも触れたツアーとなった。
旅を終えて今、感じているのは「マラッカには、ハレとケの両方のよさが、心地よいバランスで共存している」ということ。レストランで食べるニョニャ料理に、中心地ジョンカー通りにある瀟洒なプラナカン文化。そこから車で30分ほど北上すると、海辺の小さな市場が現れ、そこで日常の買い物をするマラッカ人がいる。繊細な細工のビーズサンダルを愛する人がいれば、トタン屋根の全面開放型の屋台では、猫がのんびり寝そべってお昼寝。マラッカとひとことにいっても、その素顔は、ひとことでは表せない、としみじみ思った。
また、料理を教えて下さった「ナンシーキッチン」のナンシー先生がとっても明るくて楽しくて、クラスが終わった後も、ナンシー先生の話題で持ちきり。「辛いことがあったとき、ナンシー先生の顔を思い出すと、力が抜けそう!」という参加の方の意見にみんなで笑ったり。習ったポピアがとてもおいしかったので、スーパーでポピアを焼くための特製フライパンを購入。これがなかなかよい買いもので、今ではクレープ生地を焼くフライパンとしても重宝している。
さて、現地で食べた料理を紹介しよう。
マラッカ名物のチキンライスボール
しっかり味のついたご飯をギュッと丸く固めたチキンライス。なぜマラッカのご飯が丸いかというと、むかし持ち運び用に作られたとも言われているが、真相のほどは不明。食べるときは、スプーンの背で押しながら結局ほぐして食べるしね。でも、マラッカに来たよ!という思い出に刻まれることは間違いない。丸1羽で頼むと、砂肝などの内臓系も一緒に提供される。これがおいしい!
「マラッカ・チキンライスボール」。ご飯は、ほかの地域のチキンライスのご飯より、しっとりとした水分多めの食感。鶏と一緒に盛られたきゅうり、副菜で頼んだキャベツも美味。「和記鶏飯團」にて
ぐつぐつ鍋、サテーチュルップ
マラッカにきたら、外せない鍋がこれ。とても有名なのに、ほかの地域で見たことがない。きっと、この独特のスープを作るのが難しいんだと思う。
コクと香ばしさに、甘さと唐辛子の辛みもある濃厚で複雑なピーナッツソースをスープにした鍋「サテーチュルップ」。巨大な冷蔵庫に、肉、野菜、魚のすり身、魚介、豆腐系などの具が30種以上入っているので、好きなものをじぶんで取って、鍋で煮て食べる。「萬里香」にて
けっこう辛い。だからビールにも合う。ソースはピーナッツの濃度が高く、どろっとしている。そのため鍋底が焦げやすく、しょっちゅうお店のお兄さんが、鍋をかき混ぜにやってきてくれる。スープを継ぎ足し継ぎ足しで、まるで老舗の鰻のソース状態。この濃厚スープは、パンにも合うので、食パンも追加注文。スープを吸ったパンは、おおぉ!甘くて濃厚でやめられない!ふと、このスープに入っているピーナッツの量はいかほどだろう…と思う。きっと目が飛び出るぐらい大量で、この鍋を日本で作ろうと思ったら、超高級料理だなぁ…。
マラッカ人のソウルフード、アッサムペダス
これも、マラッカに来たら食べずに帰るなかれ、という料理。現地のコーディネーターとしてサポートをしてくれたハムザさんが「故郷NO.1の味!」という料理で「新鮮な魚がとれるマラッカだからこそ、味わえるんです」とのこと。
夜の屋台で食べたので写真の明るさがイマイチだが、これがマラッカ人の愛する料理「アッサム・プダス」。さまざまな魚を使ったスープで、魚のうま味をダイレクトに味わえる。じわじわ辛く、ご飯&塩卵と一緒に食べる。「クレイポット・アッサムプダス」@ラクサマナにて
なお、ハムザさんの愛するこの味は、ツアーに参加して下さった方の人気No.1料理に。やっぱり、その土地の人が愛する味は、私たち外国人の心も動かすんだな、と。
グラ・ムラカと搾りたてココナッツミルク「チェンドル」
こちらもマラッカ名物のかき氷「チェンドル」。チェンドルといえばパンダン風味の緑のゼリーが注目されるが、今回、あらためて思ったのは、コク深い黒砂糖「グラ・ムラカ」の偉大さ。
ほのかにブラウンの見える部分が、深いコクのある黒砂糖「グラ・ムラカ」のシロップ。椰子の樹液から作られるマラッカ名物。参加者のおひとりがグラ・ムラカにハマり、お土産にも購入されていた。「カサデルリオH」にて
このコク深いグラ・ムラカに、搾りたてのココナツミルクという贅沢。あぁ…この2つは、日本では手に入らない…。どんなに技術があって、どんなに経済が発展しても、手に入らない食材や土地の味はかならずある。当たり前だけど、そうなのだ。私たち、いつの間にか日本でなんでも食べられる、と思ってない? わたし自身、そう勘違いしていたかもしれない。とくに、シンプルな調理のものは、食材の味が決め手なので、日本では再現できない。このチェンドルを食べるために、マラッカに行く価値はじゅうぶんにあると思った。
そのほか、このデザート屋台もおいしかったな~。
すべて手作りで、さらに作りたてほやほや。その日の朝に作って、その日に売り切り。大きなトレーで蒸したやわらかなおやつが多く、それを小さく切り分けて提供
マラッカの町並み、マラッカで出会った人々。きっと今、この時間も、彼らはマラッカで笑顔だと思う
マレーシアごはんツアーは、スタートして5年が経った。その間、6回のツアーを開催したが、どの土地にも、その土地にしかない味と匂いと、そしてその味を愛する人たちがいた。味つけも嗜好もそれぞれ違っていて、でもそのどれもがすばらしくおいしくて、忘れられない。
「マレーシア料理」とひとことにいうけれど、日本でも地方でそれぞれ違いがあるように、さまざまな味がある。人の営みや歴史の数だけ違いがあるのだ。そして、そのどれもが尊い。だから、食を探るのはおもしろい。ここにも、そこにも、そして世界中に、生きている尊い人がいることを感じられるから。
みんな違っていてそれでいい。それこそが尊いこと。
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