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ごはんで感じるマレーシア。おいしさと心地よさに満ちた各地・各民族の家庭料理

マレーシアの北から南まで、約1カ月かけて巡り、各地の家庭を訪問したごはん旅。2023年に実施したこの旅の体験をもとにパネルを制作しました。2024年今年、日本アセアンセンター(東京・浜松町)、ねったいかん(東京・高島平)、堺市国際課イベント(大阪。堺市)、マレーシアフェア(東京・豊洲)の4ヵ所で、パネル展を開催。多くの方にお立ち寄りいただき、こころより感謝しております。

展示したパネルをこちらに紹介しますね。マレーシア各地の家庭料理です。


・ゆでチキン、イポー麺、ゆでモヤシ
場所:イポー
Ms Joeann’s cooking in Ipoh

人生ベストのゆでチキン 
レストランを営むジョアンさん。常連さんのリクエストでよく作るというゆでチキンは、期待を超えるおいしさだった。しっとり、弾力のある肉質もさることながら、驚いたのは鶏皮。コリッとした食感で、心地よくサクッとかみ切れる。これ、永遠に食べたい。1.8キロのカンポンチキン(地鶏)が脂と肉のバランスがベスト、とジョアンさん。なるほど、納得!


・ハーブご飯、山菜のあえ物、ニョニャチキン
場所:ペナン
Ms Tarina’s cooking in Penang

 重なり合う味覚
中国移民の末裔であるプラナカンにルーツをもつタリナさんに、母の味であるニョニャ料理を習った。おいしく作るコツは「順番を守る」「手間を惜しまない」「バランスを考える」。たとえばナシウラム(ハーブごはん)は20種近い食材を使い、それを加える順番が決まっている。そうやって作った料理は、美しく、得も言われぬ味。重なりが新しい味覚をうんでいた。


・蒸し魚、野菜炒め、豚足の黒酢煮
場所:ペナン
Mr Lim’s cooking in Penang

ニンニク油が食欲増進
タクシードライバーのリムさんは、ペナンのおいしい情報を教えてくれる私の師匠。よく家で作るという蒸し魚を教えてもらった。食べてみると、見た目よりもガツンとくる味。その理由は、ニンニク油。細かく刻んだニンニクを多めの油で揚げたもので、蒸した魚に薬味のようにふりかけて仕上げ。醤油ダレとニンニクの香ばしさで、ご飯がグングンすすんだ。


・イカの甘辛炒め、野菜と小魚炒め、魚スープ
場所:クアラ・トレンガヌ
Mr Faiz’s Family cooking in Terengganu

ご飯にこだわりあり 
日本で知り合ったファイズさんの実家に訪問。お父さん、弟夫婦も一緒に食卓を囲んだ。魚スープは酸味が効いてさっぱり。イカの炒めものは甘辛い醤油味。どちらもご飯に合う味つけで、生野菜もあってヘルシーだった。そして翌日も、みんなで屋台に集合。ご飯料理のナシダガンやナシミニャを食べた。それぞれご飯の味が違っていて、香りがいいのに驚いた。


・牛肉の醤油炒め、魚の甘酢味、汁だく野菜
場所:プトラジャヤ
Mr Johari’s cooking in Putrajaya

母の味を忘れない
ジョハリさんが作ってくれた母の味。どのレシピも、ひと工夫あったのが興味深かった。たとえば、牛肉とポテト煮込みは、仕上げに石うすでつぶした黒胡椒をたっぷりと。さわやかな辛味が甘い醤油味によく合った。「母は3年前に亡くなりました。僕のなかにある母の味の記憶が無くなる前に、何度も再現したい」というジョハリさんの言葉が胸に響いた。


・チキンカレー、ココナッツスープ、蒸した麺
場所:スレンバン
Ms Usha’s cooking in Seremban

スパイスの誘惑
「自家製のカレー粉よ」と差し出してくれた容器の中身を香ってみたら、なんていい香り! 市場で購入したスパイスを綺麗に洗って天日干し。それを専門店で挽いてもらったもの。できあがったチキンカレーは食べたそばからまた食べたくなる味で、これぞスパイスの誘惑か。こんなにおいしいカレー粉だが、もらった娘は「外食が多いから使い切れない」と笑っていた。


・技、手間、根気が必要な伝統菓子
場所:セランゴール
Mr Eric’s cooking in Selangor

ひと口にこめられた技
エリックさんは伝統菓子を特注販売する料理人。「菓子作りは簡単」とエリックさんは言うが、私が不器用だからなのか、とても難しかった。技に加えて、型から出すときの慎重さや1個ずつ作り続ける根気もいる。さらに、焼き上がってすぐ食べようとしたら「2〜3日後が食べごろだよ」とエリックさん。時間もかかる。いやもう、菓子職人には感謝しかない。


・魚の煮込み、パイナップルカレー
場所:マラッカ
Ms Norliah & Friend’s cooking in Melaka

酸っぱ辛い名物料理
熱した油で、真っ赤なトウガラシペーストを炒めるノーリアさん。綺麗な洋服に油がはねないか心配だったけど“エプロンはしない主義”とのこと。できあがったのはアッサムプダス。トウガラシの辛味とタマリンドの酸味が特徴の魚の煮込みだ。当日の朝に買った魚はふわっとやわらか。サラサラスープをご飯にかけると、ちょっぴり辛いお茶漬けみたいだった。


・焼き菓子、魚カレー、ルンダン
場所:マラッカ
Mr CD’s cooking in Melaka

ぽつんとお菓子店
マラッカ中心地から車で約2時間。見渡す限り家や店はなく、大通りにポツンと佇む菓子店を営むCDさん。こんな場所に、と驚いたが、車で買いに来る人が多いそう。教えてもらったのは伝統菓子のクエバカール。オーブンを使った焼き菓子で、驚いたのが、焼きたてを食べると中がトロトロ〜。2年をかけて開発したオリジナルレシピがお客さんを魅了している。


・芋ドーナツ、海老麺、チキンカレー
町:ジョホール
Ms Naf’s cooking in Johor

みるみるうちに真っ白
ナフさんに教えてもらったのは、ジョホール版のドーナッツ。サツマイモと小麦粉を混ぜた生地を揚げて作る。おもしろかったのが砂糖をからめる工程。鍋で砂糖を溶かし、ドーナッツにていねいにシロップをからめていると、だんだんと白く結晶化。もちっとした食感にサクサクの甘みが美味。サツマイモのオレンジ色と白い砂糖のコントラストも美しかった。


 ・葉っぱで包んだご飯とおかず多種
町:サバ州のクダット
Rungus Family’s cooking in Sabah

魚の干物を活用
コタキナバルから海に突き出たクダット半島に向かって北上すること車で約3時間。赤土のデコボコ道の揺れに体がなじんできたころ、ルングス族が暮らすイヌキラン村に到着した。食卓に並んだのは、庭に自生する野菜中心のおかずとご飯。肉料理はなく、魚は保存が効く干物を活用。塩味とうま味の役割にもなっていた。素朴な味わいが、むしろ自然の恵みに満ちていた。 


・バンブーチキン、ルイ茶、
アッサムフィッシュ、、ウマイ、ミースア
町:サラワク州、クチン
Ms Karen’s cooking in Sarawak 

伝統料理を家庭でも
大きなガラス窓から明るい陽射しが差しこむ台所。料理上手のカレンさんが隣で暮らす義母とともに、料理を教えてくれた。どれも絶品で、とくに鶏肉とタピオカの葉で作るバンブーチキンは最高。もともと竹筒で調理をする伝統料理で、カレンさんは土鍋で蒸し煮に。身がしっかりした老鶏を使い、調味料は塩、隠し味に茸だし。鶏のうま味が胃にしみわたった。


旅をして感じたこと。あらためてマレーシア料理とは何ぞや?といえば
それは、時間と空間を重ねてうまれた料理の集合体である

マレーシアは複数の民族がともに暮らす多民族国家です。そのため家庭料理は多様で、祖先のルーツや家族の風習によって、まるで別の国のような料理が食卓に並びます。また、地域によっても、好まれる料理が異なっています。このようにバラエティに富んだ料理は、風土、歴史、民族性に加えて、多様な価値を認める社会からうまれました。私とあなたが違うのはあたり前。その前提のもとで、私はこの味が好きだ、と胸を張って伝えることができ、そのことを誰もがあたり前に受け止めているからです。家庭の味、民族の味、地域の味。そのどれもがマレーシア料理を作っている大事な要素であり、そしてまたマレーシア料理というひとつの集合体の一部でもあります。そして、時間と空間が絶えず変化するように、マレーシア料理も日々発展を続けています。


 ◇パネル詳細◇
・旅人・文:古川 音(マレーシア食文化ライター/ WAU編集人)
・パネルデザイン:Jun Tanaka (meegraphicsprint)
・紹介都市:イポー、ペナン、クアラ・トレンガヌ、クアラルンプール郊外(セランゴール、スレンバン、プトラジャヤ)、マラッカ、ジョホール、クダット(サバ州)、クチン(サラワク州)
・Special thanks :日本アセアンセンター、マレーシア大使館、マレーシア政府観光局、堺市国際課、熱帯環境植物館、フィグラティブジャパン、Hati Malaysia、マレーシアごはんの会

なお、こちらのパネルは、貸し出しを受付ています。マレーシアごはん展にご興味のある方、企業や自治体の皆さま、お気軽にお問い合わせください。

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