オランマカン

People 志岐文子さん 元・青年海外協力隊

1975~1977年の2年半、クアラルンプールに司書として派遣された志岐さん。マレーシア公務員研修所(INTAN)の資料室で、文献を分類し、目録カードをつくるのが仕事だったそうです。およそ40年経った今でもマレーシアが大好きで、マレ-シアごはんの会のイベントにもちょこちょこ顔を出して下さいます。そこまで惹かれる、マレーシアの魅力をお聞きしました。(2013年12月10日)


25歳でクアラルンプールに。故郷の佐賀よりも都会でびっくり!

音: 青年海外協力隊の方とお話しをすると「あのころは道路が無くて、信号もなくて…」と田舎暮らしのことが多いのですが、志岐さんは首都クアラルンプールでの仕事だったのですね。

志岐さん: そうなんです。私は九州の佐賀出身で、佐賀からクアラルンプールにきたものですから、大都会でびっくり! 飲茶なんて、マレーシアで食べたのが人生初。ブキビンタンにあったステーキ専門店「シップ」のペッパーステーキがおいしくてね~。まるで私、おのぼりさんね。

左より。カンポン(マレーシアの田舎のこと)に招かれて。たぶんスガマットの駅。当時マレーシアの新聞に掲載された志岐さん。目録作業をしている

音: 38年前のクアラルンプールには、まだツインタワーはありませんでしたね。

志岐さん: 高い建物といえば、フェデラルホテル、エクアトリアルホテル、リージェントホテルぐらい。アンパンパーク駅に隣接したショッピングセンターがいちばんの繁華街でした。まだ固定相場制で、1ドルは360円、1リンギは100円の時代。マレーシアに住んでいる日本人はたしか2000人ぐらい(現在は約10000人)。緑が多くて、とても綺麗な街でした。

写真3_01.jpg 当時、結婚式にも招待された音: どんな暮らしでしたか?

志岐さん: 1年目は、INTAN内の宿泊施設に住んでいて、朝昼晩の食事つき。マレー系の料理が中心でした。断食にも挑戦しましたよ。不思議にあまりツライと思った記憶はなく、それよりも断食明けに用意されるクエ(お菓子)がおいかったのを覚えています。とくにクエダダ!(砂糖漬けのココナッツフレークをクレープ生地で包んだもの) あれが大好物で、それを見つけると1番に食べていました。(写真は結婚式に紹介されたとき)

マレーシアは、いろんな食文化を体験できる国

志岐さん: マレーシアは、食のバラエティの豊かさが本当に魅力。暮らした2年半で、いろんな食を体験できたのは本当によかった。東京でもいろんな料理を食べることができるけど、食文化まではなかなか体験できないでしょう。マレーシアは、住んでいる人たちの普段の食事がバラエティに富んでいるのが素晴らしい。親から受け継いだレシピ、祭りで食べるお祝い料理…それらは文化の象徴でもある“本物”の食事なんです。

最近の志岐さん。左より。空港に着くなりホワイトコーヒーを1杯。ジャランアロー(アロー通り)でビールを飲むのも定番

音: 分かります。バラエティに富んでいる食事がおいしいのは、それがマレーシア人の普段の生活に密着しているから、なんですよね。

志岐さん: 私の周りのマレーシア人は食いしん坊が多くて、食のこだわりが半端ない。もうこの店でいいじゃない?と私なんかは思うのだけど、おいしくない店では絶対に食べないんです。

音: マレーシア人らしいです。

志岐さん: いちばん思い出に残っている料理は、ペナンで食べたアッサムラクサです。あの独特の風味が印象的で、今でも大好き。次はナシレマね。マレーシアで初めて食べたごはんがナシレマだったんです。路上にある屋台で売っていた三角ナシレマをブンクス(持ち帰って)して。煮干しのカリカリ感、ピーナッツの香ばしさ。素朴な味でとてもおいしかった。

音: 住んでいらっしゃったときに比べて、最近のマレーシアは変わりましたか?

志岐さん: ミルクと洋菓子は、格段においしくなったみたいね。私が住んでいた頃は、フレッシュミルクが手に入らなかったので、ケーキやパンは残念ながらおいしくなかった。といっても、食文化自体は、あまり変わっていないのでは。クアラルンプールはずいぶん整備された街になったけど、屋台の様子、提供している料理はほとんど40年前と同じ。ちゃんとマレーシア人は食文化を守っていると思う。これからもずっとそのままであって欲しいです。

音: 志岐さんにとって、マレーシアの魅力とは。

志岐さん: マレーシア人のやさしさが1番最初に思い浮かびます。他人を傷つける人やキツイ言葉を言う人はほとんどいませんでした。また、マレーシアに住んだことで、日本の良さに気づくことも出来ました。たとえば日本のリンゴ。日本で見ると普通なのですが、マレーシア人に見せたら、「日本の技術はすごい!日本が大好きです!」と喜んでくれたんです。マレーシアで売っているリンゴのサイズはとても小さくて、日本の大玉のりんごを絶賛。彼女の反応をみて、日本の農業の技術ってすごいんだなぁと。マレーシア人から日本のよさを気づかせてもらったんです。

アイスカチャン(マレーシアのかき氷)のシロップの色のように、いろんな色が混ざりあえば、それでいい

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音: 今後の活動や夢を教えて下さい。

志岐さん: マレーシアと出あって約40年。こんなに長い年月マレーシアとつながっていることを不思議に思うし、ありがたくも思います。現在は、青年海外協力隊のOBが集う「国際協力サロンーTogether」と「青年海外協力隊マレーシア会」の2つの組織の事務局を担当しています。「青年海外協力隊マレーシア会」はマレーシア隊員のOBの会で、現在の会員は450人。9月に開催した第2回総会には、100名近くの方が日本全国から集まって下さいました。OBがこんなに集まる国はめずらしく、これもマレーシアの魅力だと思います。

でも、こんなにマレーシア好きやマレーシア通がいるのに、日本ではまだまだ知られていないんですよね。今後もOBどうしのネットワークづくりや外部に向けてのイベント活動に取り組んでいきます。マレーシアをキーワードにいろんな人をつなげていきたい。できるだけ長く続けていきたいので、マレーシアらしく、マイペースにやるつもりです。

音: 志岐さん、私も同じです。マイペース&長期視野でいきましょう~。本日はありがとうございました!


音の感想: ごはんの記憶とは、こんなにも人の脳に鮮明に焼きついているものなのか。志岐さんの言葉を聞いてあらためて思いました。初めて訪れた土地で、初めて食べるごはん。それもナシレマという、その国に根付いた借り物ではないマレーシアごはんを食べたことで、志岐さんはそこに暮らす人々のなかにスッと溶け込んでいったのかもしれません。マレーシアに比べると、日本は借り物がちょっと多いかなぁ~。もっと気軽に和菓子のカフェで長居したり、蕎麦屋で打ち合わせしたりしたいな…と、喫茶店で珈琲を飲みつつ、考えています。

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