2010年12月、エアアジアは東京国際空港(羽田)における初のLCC(格安航空会社)として就航。記念のプロモーションとして、羽田-クアラルンプールの片道航空券をたったの5000円という破格値で販売し、日本中の話題に。「成田から羽田までのタクシー代より安い」「空飛ぶバス」と報道され、同時に目的地のマレーシアも注目を浴びることになりました。このプロジェクトは、ある1人の男性の熱い思いとともにありました。その男性とは、エアアジアX 日本支社長 坪川成樹さん(※)。彼が送った1通の企画書から、この壮大な計画が動き出したのです。(2012年5月14日)
エアアジアとの出会い
音: エアアジアとの出会いを教えて下さい。
坪川さん: すべては4年半前に送った1枚のラブレターから始まりました。
音: ラブレターですか?
坪川さん: 当時私は同じ業界で働いており、エアアジアが日本就航を検討している、ということは知っておりました。航空会社での収益管理、価格設定、旅客需要予測の経験があったのと、もっと多くの方に格安で海外旅行を楽しんで頂きたい、という強い思いから、「自分ならこう出来る」という企画書を送りました。同じ業界におりましたので、相手が知りたいことは良く分かる。必要なことを簡潔に箇条書きにし、航空運送事業許可の取得を約束する、と1枚の企画書にまとめて送ったのです。すると、数時間後にCEO(社長)から返信があり、「いつなら会えるか?」と。
音: すごいスピードですね。
坪川さん: もちろん問題は山ほどありました。当初、エアアジアは羽田ではなく別の空港に就航を検討していましたが、旅客数だけでなく航空貨物需要もふくめた総括的な判断から、私は「羽田でなければ絶対にダメだ」と粘り強く交渉しました。羽田でないのなら安定した収益を約束出来ないので私は降ります、と伝えたことも。現在日本へ就航しているほとんどのLCCはお客様だけを運び、貨物室はガラガラ…。航空機すべてのスペースをムダにすることなく、またその恩恵をお客様に直接返還する直販型のビジネスモデルを構築し、おかげさまで現在では安定した搭乗率(2012年第1四半期の平均搭乗率:92%)で支えて頂いております。最初の就航地は、交渉の末、羽田に決まりましたが、プレッシャーも大きかったです。まだまだやりたい事が沢山あるので、あまり良くないのですが休日もよく仕事をしてしまいます。日本人ですね(笑)。
海外を体感して欲しいから、飛行機を飛ばす
音: 坪川さんの熱いパッションはどこから湧くのですか?
坪川さん: 多くの方に旅の楽しさを知って欲しい。とくに若い方に海外への旅をして頂きたい。私が若かったころは、借金をしてでも海外へ出かけ、またその方法は古臭いですがバックパッカーであったり、安宿を渡り歩いたりして、世界を旅する人が多くいました。もちろん全てではありませんが、現在の成功者の多くが、感性豊かな若かりし頃に海外旅行を経験し、皆口をそろえて、外を見ることが大切だと言われております。今は、不景気や色々な理由から海外を旅する人が減っています。日本とは異なる文化を見て、違った食事を食べ、異国の人とふれあい、話すことを体感して欲しい。人が物やお金を動かし、心を豊かにし、日本を元気づける!そのサポートのために、これからも安い価格で飛行機を飛ばし続けたい。
音: マレーシアへの旅行客は増えていますか?
坪川さん: ありがたいことに乗客数は伸びています。ただ、当便を利用する乗客のうち、1/3の方は乗り換え便としてご利用して頂いているんです。つまり、1/3の利用者はクアラルンプールの街におりて頂いていない。私としては、乗客皆さまがマレーシアを目的地に利用してもらえるよう、マレーシアの知名度も上げていきたいと考えています。
音: あんなに素晴らしい国なのに…。やはりあまり知られていませんか?
坪川さん: そうなんです。リピーターの方も多いのですが、音さんはなぜだと思いますか?
音: マレーシアは、日本人にとって輪郭が見えにくい国なんだと思います。つまり、楽しむためには、ひと工夫いるんです。たとえば、多民族国家なので多種多様な料理が味わえる半面、民族ごとの屋台があってそれぞれで扱っている料理が違ったりします。また、クアラルンプールのシティ観光とランカウイのリゾートでは、印象がまったく違いますし、そこにボルネオのジャングルまで入れたら、もう、あれもこれも、でして(笑)。マレーシアはこんな国です、とひと言で表せない国なんですね。それだけ多彩な魅力を秘めている、ということ。それをひとつずつ紐解いて、体感してもらえるようにしたいですね。
坪川さん: 先日(4月10日)、JATA(日本旅行業界)とマレーシア政府観光局が、「2015年までにマレーシアを訪れる日本人旅行者の数を100万人に増やす」というプロジェクトの覚書を結びました。現在の旅行者は40万人。あと3年で、2.5倍増を目標にしています。「マナベルトラベルマレーシア」をスローガンにして、2012年のキャンペーンテーマ「Go!Go!マレーシア」と連動。具体的には、クアラルンプールのシンボルであるツインタワー(KLCC)の写真をデザインしたタクシーの走行や、東京・大阪のラジオ局でマレーシアの情報番組を持ち、マレーシアのプロモーションに力をいれています。エアアジアもこのプロジェクト成功のために、6月22日より羽田便を週7便へ増強、今年中には関空に続いて、もう1つ別の空港に就航させたいと考えています。将来的には、羽田に2便飛ばす計画も視野にいれ、増加する需要へも対応。私もマレーシアが大好きなので、ぜひ皆さんに行って頂きたい!燃油代も頂いておりません。頑張ってます!
音: 頑張ってください!そしてありがとうございます!
音の感想: マレーシア♡らぶの私にとって、エアアジアの存在はとてもありがたい。わたしは実家が九州なのですが、エアアジアが就航してからは、まるで実家に帰るような感覚でマレーシア行きのチケットを予約しています。そしてなにより、以前よりもずっと、マレーシアを身近に感じられるようになったのがうれしい。いつでも行けるし、いつでも友人を呼べる、と実感できるのはスゴイことです。海外に行き、異国の人と出会い、人生が変わるかもしれない旅の第一歩が、飛行機の時間。そう思ったら飛行機って、なんてロマンティックなんだろう。(音)
※2016年現在、坪川様は別の会社にいらっしゃいます。
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