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マレーシアごはんの歴史、変遷

Malaysia Gohan Kai Report マごはんメンバーズ向けメルマガ(発行日 8/Nov/2019)を加筆修正したもの  


マレーシアは古い歴史をもつ若い国である。
『もっと知りたいマレーシア』(弘文社/1994年/織部恒雄・石井米雄 編)より


その国の料理は、国が歩んだ歴史と深く関わっています。マレーシアも同じで、多民族がおりなす多彩な食文化は、いうなれば歴史が育んだもの。マレーシア料理の全体像をつかもうとすると、おのずと歴史に目を向けることになります。

1403年(日本は室町時代)マラッカ建国に始まったマレーシアの歴史は、ポルトガル、オランダ、イギリスがやってきた大航海時代の波にのまれ、さらに日本の占領下をへて、マラヤ連邦として1957年に独立。そして1965年、現在のマレーシアになりました。

現在の2023年は、独立66年です。数字だけ見るとずいぶん若い国ですが、食文化とは、なにも国の独立と同時にエイッと魔法のように立ち現れたものではありません。この地に生きてきた人が、日々の営みのなかで育み、変容させてきたもの。食文化には歴史が積み重ねてきた今があります。そのことを表現した言葉が、上に記載した「マレーシアは古い歴史をもつ若い国である」ということ。まさしく!

余談ですが、わたしが子どものころ、歴史といえばおべんきょうでしかなく、歴史で習ったことと今の自分を結びつけるという発想もイメージもありませんでした。ところが、マレーシアに興味を持ってから、歴史の歩みの延長に今の世界があることを実感できるようになったのです。民族の味、西洋の味、それらがひとつの国のなかに混在しているのはなぜか。おべんきょうの世界だった歴史が現実の事として実感できるようになったのは、マレーシアのおかげ。

前置きが長くなりましたが、歴史からみたマレーシアごはんのポイントを4つ、みてみます。(個人的見解を含みます)


■1 大昔にやってきたインド文化

さかのぼること紀元後2世紀。マレー半島は黄金の地とよばれ、金を求めて多くのインド商人がやってきたそうです。インド文明の伝来はひじょうに古く、今でも文学や法律用語にインド文化の影響をみることができます。

マレーシア料理にスパイスは必須。それも乾燥系のパウダースパイスの活用が多い。もしかしたら、のちに出てくるイギリス占領下のインド人移民時代のずっと前から、スパイス料理はこの地に根付いていたのでは、と想像します。

■2 15世紀以前は米と魚が基本

ポルトガルなど列強諸国がマラッカに現れる15世紀以前。食事の基本は米と魚だったそうです。

米は乾燥に強いインディカ米で、川魚や田んぼにいる魚がおかず。この頃から、現在もマレーシア料理に欠かせない小エビを塩漬けにした調味料(ブラチャン)で米食を楽しんでいたとか。

肉料理は、日常食ではなく特別な日に食べるもの。そのため、人々のつながりを強くする宴に欠かせないものでした。そして肉と同じように扱われたのがお酒。ヤシ酒がよく飲まれていたそうです。

果物、スパイス、砂糖(さとうきび)が自生する恵まれた環境で、柑橘類の果物でビタミンの補給もできた豊かな土地。この恵まれた環境のおかげで、戦争時以外に人々が飢えに苦しんだという資料はなく、西洋に比べて健康体の人が多かった、と文献に記載されています。

■3 歴史を象徴するふたつの食事

国民食「ナシレマッ」

ココナッツミルクで炊いたご飯に、サンバルを混ぜて食べる料理。米、ココナッツミルク、唐辛子、ブラチャン(小エビを塩漬けにしたもの)、小魚といった基本の食材は、どれも大航海時代前からこの地にあったもの。まさに、身近にあった食材でつくった伝統の食事です。

麺料理「ラクサ」

ラクサは地方ごとにさまざまな味があります。たとえばペナン島の「ペナンラクサ」は魚だしで酸味のあるスープ。ボルネオ島サラワク州の「サラワクラクサ」は胡椒など多種のスパイスにココナツミルクを加えたもの。同じラクサという名前がふしぎなぐらい別の味です。というのも19世紀以前、イギリスの占領下になる前のマレーシアは、ひとつの国ではなく小さな王国の集まりでした。料理に郷土色が色濃い反映しているのはこのためで、ラクサはその歴史を表した料理といえそうです。

■4 大航海時代から現在へ

現代のマレーシアごはんの特徴であるマレー系、中国系、インド系というおもに3つの民族の料理。

歴史的には、1850年~1900年前半にイギリスの政策のひとつ、ゴムと錫の公共事業のために中国とインドから移民がやってきます。人々の移住とともに、中国、インドの料理がこの地に根づきました。

それぞれの民族が持ち込んだ味が食べられるバラエティに富んだマレーシアごはん。

これは単に、民族の味がいろいろある、というだけでなく、さまざまな民族の味が、ひとつのマレーシアという国の料理として親しまれている、というのが、現代のマレーシア料理の特徴です。

たとえば中国料理はマレー系の人にも人気。首都クアラルンプールのマンダリンホテルにある中国料理店「ライポーヒン」はポークフリー(Pork Free, No Pork)のレストラン。ランチタイムにはチキンで作った焼売や肉まんなどの点心を楽しむマレー系のお客さんがたくさん。また、KLCCショッピングセンターにはこちらもポークフリーの小籠包店「ディンタイフォン」がOpenしています。

そして、中国料理店の看板メニューがカレーヌードルやフィッシュヘッドカレーだったり。インド料理店には焼きそばミーゴレンがふつうにあります。本場の中国やインドではあまり見かけない光景だと思います。

それぞれの民族の料理は、民族の味でありながら、空間や場所を融合することでマレーシア料理として根付いているというのが今のマレーシアだと思います。さまざまな人がこの地に訪れ、生きてきたからこそ豊かに花開いているのです。

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写真や年表をレイアウトした資料を作りました! こちらも拡大して、ご覧ください。

マレーシア(おもにマレー半島)の年表

大航海時代前のごはん

西洋の影響を受けたといわれるマレーシアごはんとおすすめレストラン

参考文献:『もっと知りたい マレーシア』(弘文堂)、マレーシア百科(発行所:関西電力/非売品)、『大航海時代の東南アジア1』(法政大学出版局)、東南アジアの伝統食文化(ドメス出版)

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