Malaysia Gohan Kai Report マごはんメンバーズ向けメルマガ(発行日 7/Jul/2020)を加筆修正したものです
マレーシア料理で大事なのは「コク」「塩味」「香り」。
そして、混ぜて食べておいしいように工夫されている。
さて今回は、マレーシア料理はどんな味なのか。料理に欠かせない調味料からひも解いてみようと思います。そして、その味はなぜ好まれているのか。バラエティに富んだマレーシア料理をぐっと俯瞰して眺めてみます。
ルーツの異なる3つのジャンル
まず、マレーシア料理がバラエティに富んでいるのはなぜか、というお話しをします。近隣諸国や西欧の支配の影響に加えて、19世紀後半に渡ってきた移民の味が、そのまま料理のジャンルとして確立している、というのが大きな特徴です。
もともとこの地に住んでいたマレー系民族、移民として渡ってきた中国系、そしてインド系。これらの3つのジャンルの料理はルーツが異なるため、使う食材や味つけの特徴が違っています。さらにいえば各ジャンルのなかに、地域性やハレの日の味など多様性があります。
ただし、ポイントなのは、ジャンルで分かれているといっても、そこに境界線はほぼなく、日本でいう和食、町中華、カレーのような感じで、どのジャンルも民族関係なく、マレーシア人全体に親しまれている、ということ。
というのも、中国やインドから移民が渡ってきたのは19世紀後半。それから100年以上が経ち、移民が持ち込んだ味は、マレーシアというひとつの国の料理として互いに影響を与え、発展してきているからです。たとえば、中国から渡ってきた麺をマレー系がよく使う辛味調味料「サンバル」で炒めたり。中国由来のチキンライスがマレー系のスパイスでローストされていたり。インドのチャイ由来といわれる甘い紅茶は、スパイスをあえて入れないことで、国民的な人気のドリンク「テタレ」になった、ともいわれています。
つまり、それぞれの民族の味に、別の民族の“好み”や“おいしい”が加わり、マレーシア料理という集合体ができあがっているのです。
調味料の代表格は、甘辛のサンバル
この前提をふまえたうえで、日本のしょうゆにあたる、マレーシアらしい基本の調味料をひとつ挙げるとするなら、「サンバル」です。
サンバルは、唐辛子、玉ねぎ、にんにくをすりつぶし、多めの油でじっくり炒めて、砂糖やタマリンド、ブラチャン(海老の発酵調味料)などを加えたもの。コク深く甘辛味が主流で、炒めものの調味料、ご飯や麺のタレとしてよく使われます。
じつは、サンバルの基本材料である唐辛子、玉ねぎ、にんにく。これにしょうがを加えた4つの食材は、マレーシア料理全般でよく使われています。カレーもスープも麺も野菜炒めも、これらの食材を使うことが多い。なお、調味料として使う唐辛子は乾燥タイプで「生より甘みがあるからね」とシェフのチャーさん。
コク深く甘辛いサンバルの味は、マレーシア料理全体に共通する味であり、そしてサンバルを構成する唐辛子、玉ねぎ、にんにくはマレーシア料理の基本の材料ともいえます。
コク深い味つけなのは、ご飯に合うから
マレーシア料理は全般的にコク深く、味の濃いものが多いです。これは、味の核であるサンバルがそういう味だから。
そしてもうひとつ、マレーシアの主食がご飯だから、だと考えています。つまり、濃い味のおかずは、ご飯によく合うのです。
濃いとは、「コク」があり、「塩味」と「香り」が強い、ということです。サンバルもコクがあり、香りが強い。ココナッツミルクも、香りとコク。ブラチャンは塩気と香り、パンダンリーフは香りです。
つまり、マレーシア料理によく使われている調味料は、この「コク」「塩味」「香り」3つのどれかの特徴をもっています。これらの特徴はご飯によく合う味でもあるのです。
それぞれの調味料については、下記資料にまとめましたので、ご覧ください。
混ぜて食べるのが基本
マレーシア料理を語るうえで、もうひとつ大事なポイントが食べ方です。マレーシア料理は、混ぜて食べるのが基本。ご飯とおかず、麺とトッピングの具、そこにタレや薬味などを自分のスタイルで混ぜて食べます。
そのため、ひとつひとつの料理は、比較的シンプルな味つけが多いのです。使用する食材の数も、メインの食材に加えて、あと1種か2種程度。パッと見たとき、彩がないように感じるのはこのためで、材料を複数使わず、メインの食材を徹底的に引きたせる調理法なのです。なぜなら、混ぜるのが前提で、混ぜたときにおいしくなるように設計されているから。つまり、それぞれの料理の特徴(食感や味)を際立たせ、それらを多数用意し、食べる人が好きにピックアップして、混ぜて、よりおいしくして食べるのがマレーシア流なのです。
いろいろな味を混ぜて食べると、マレーシア料理はよりおいしくなる。それはまるで、個性の違う人々が、ときに混じり合い、ときに別々に、そうしながらともに暮らすマレーシアという国そのものにみえるのです。
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マレーシアの調味料、その味の特徴をまとめてみました!