マレーシア料理図鑑48/飲みもの/中級★★★★/マレーシア料理の奥深さを知りたい人/
香り高い深煎りコーヒー。表面がツヤっとしているものがあり、それは豆を焙煎しているときにコク出しのために油分を加えているため。写真はサラワク州クチンのコピティアム(喫茶店)にて
コピを解説
昔ながらの地元のコーヒーのこと。スターバックスのような海外発コーヒーと区別して、コピとよびます。
コピのおもしろいところは、砂糖の有無、ミルクの有無など、日本であれば、お客さんの“お好きに”部分まで細かくメニュー化されているところ。
Kopi コピ(砂糖有、ミルク有)
Kopi O コピオー(砂糖有、ミルク無)
Kopi C コピシー(砂糖無、ミルク有)
のように注文時に伝えます。
ホット、アイスのどちらも好まれ、紅茶やミロを混ぜたアレンジ版もあり、日常に欠かせない飲みものです。
コピはどうやって飲む?
かれこれ15年ほど前は、レンゲですくい、熱いスープのようにふぅふぅして飲んでいました。さらにその前は、ソーサーに移して冷ましていたこともあったそう。現在は、お好きにどうぞ。底に練乳がたまっているので混ぜてね。
コピを初めて飲む人へ
マレーシアのコピは深煎りが基本。マーガリンと砂糖を加えて焙煎するので、濃厚でコクがあり、酸味はひかえめです。
淹れ方は“Kopi Sock コピ靴下”とよぶ布製のフィルターにコーヒーの粉を入れて熱湯を何度かくぐらせる方式。淹れる人で味が変わり、コピがおいしい店は繁盛するので、店主の腕の見せどころです。
また、かつてマレーシアはコーヒー豆の生産地でした。現在も、マレー半島でリベリカ種、ボルネオ島でロブスタ種が栽培されていますが、栽培量はわずかです。
ミニエッセイ「コピがつなぐ」
映画『アイス・カチャンは恋の味』(2010年/阿牛監督)はコーヒーショップが舞台。主人公ボタックの家業がコーヒーショップで友だちやご近所さん、クジを売る人まで集まる地元の社交場になっている。通りに全面開放されたオープンな空間で、天井にファン、大理石の丸テーブルというお決まりのインテリア。ボタックが恋する少女のお母さんが、店の一角を間借りして麺料理を販売しているのもマレーシアらしい光景だ。コピの淹れ方をお父さんに習うシーンはジーンとする。受け継ぐのは目に見えないもの。見えないけど大事なもの。
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