アジアごはん比較探Qユニット「アジアごはんズ」食イベントVol.6 開催報告
ASIA GOHAN’s Event, 4 Countries COMPARISON, Sambal? Nam prik? Chili sauce? (Thai, Indonesia, Singapore and Malaysia)
タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア4カ国の味を一同に集め、食べ比べるイベント。6回目の開催となる今回は、各国自慢の「唐辛子ダレ」に注目しました。タレは4ヵ国に共通している文化で、ふだんの料理に欠かせないもの。ときにタレが味の核になることもあります。
今回提供したのは、この12種。
●インドネシア
・サンバル・ロア(スラウェシ島)… 鰹節のように燻をかけたサヨリやトビウオを使った珍しいサンバル。北スラウェシ州の州都マナド周辺のサンバルで「ブブール・マナド」とよばれるお粥に合わせる。
・サンバル・ブルット・スラバヤ(ジャワ島)…インドネシア第2の都市、スラバヤの名物料理、ウナギ用のサンバル。皮ごと丸揚げにしたニンニクが入っているのが特徴。
・サンバル・マタ(バリ島)…マタとはバリ語で生。つまり火入れをしていないサンバル。バリ人はこのサンバルがとても好きで、焼いたシーフードをはじめ、さまざまな料理にこのサンバルをつける。
・サンバル・マンガ・ムダ(スマトラ島)…青いマンゴーのサンバル。インドネシア全土にあるが、野菜料理が比較的少ないスマトラ島で好んで食べられる事が多い。
●シンガポール
・チリパディ醤油…漢方スープ「バクテー」の具である豚肉(スペアリブ)につけたり、あんかけタイプの麺「チャーフォーファン」、スープ麺「プロウンミー」、お粥にかけたりする。
・チリソース…チキンライスに必須のタレ。唐辛子を刻んで作るタイプとペーストタイプがあり、後者を自家製する店が多い。
●タイ
・ナムプリック・パオ…家庭にある市販の調味料。材料は干しエビ、にんにく、紫玉葱(ホムデン)、唐辛子など。トムヤンクンのベースであり、炒飯や野菜炒めの調理に使ったり、ドレッシングに加えることもある。さらに、パンに塗ったり、ピザソースにしたり、クレープに塗ったりなど、ケチャップ感覚で使うことも多い(今回は食パンに塗り、マヨネーズを重ね、肉でんぶ(タイ語でムーヨン)をはさんで提供)。
・ナムプリップ・ガピ…ひじょうにポピュラーなディップ(タレ)。唐辛子、にんにくをつぶし、ガピ、ライム汁、水で溶いたもの。生野菜、温野菜、鰺の焼いたもの、卵焼きなどと食べる。(ちなみに、ガピバージョンだけでなく、いろんな種類のナンプリックタレがある)
・ナンプラー・プリック…刻んだ唐辛子とナンプラーを合わせたもの。卓上調味料として、料理の味に辛さや塩分がもの足りないときに使う。ありとあらゆるものにかけ、白いご飯に垂らしてもいい。
●マレーシア
・サンバル・ブラチャン…マレーシア料理の基本の味。ココナッツミルクで炊いたご飯ナシレマッに混ぜたり、野菜や海鮮炒め、ナシゴレンの味つけに使ったり使用用途は多種。唐辛子(乾燥唐辛子を水で戻したもの)、玉ねぎ、にんにくをペーストにし、そこに発酵海老ペーストのブラチャンを加え、多めの油で時間をかけてじっくり炒めたもの。砂糖を入れて甘辛にすることが多い。
・アイル・アッサム…酸味と辛みがガツンとくる焼き魚用のタレ。マレー系民族の間で好まれている。アッサムとはタマリンドのことで玉ねぎを手でもんで水分を出す。フルーティで激辛。
・醤油チリ葱ソース…唐辛子醤油というシンガポールと同じ定番の調味料をお店オリジナルの味にアレンジしたもの。このレシピは、チキンライス用に大塚のマレーシア料理店「ラヤンラヤン」の店主マコさんが開発したもの。
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ちなみに、唐辛子タレの名前によく出てくる「サンバル」とは、インドネシア、マレーシア、シンガポールで使われている唐辛子調味料の総称(ただし各国で定義は少しずつ異なるので、それはのちほど)。タイの「プリック」は唐辛子、「ナン」は液体、「ガピ」とは海老の発酵ペーストのことです。
写真に名前をつけるとこうなります。
会場の様子。右写真は、食パンにナンプリック・パオをぬり、ムーヨンをのせたもの。魅惑のタイ風サンドイッチ!
このタレを鶏、魚、野菜、ゆで卵、ブブール・マナド(インドネシアのお粥)、白飯とともに楽しんでいただきました。また、おやつはタイの「タコ・サークー」(もちもちタピオカのココナッツミルクのせ)とシンガポールの現地お菓子、「アイス・ジェムズ・ビスケット(Iced Gem biscuits)」と「ラブレタークッキー ドリアン味(2つ折り)(Cookies – Love Letters- Folded)」。さらにオリジナルカクテルとして、みかんを使った「曜子スペシャル」を提供。こちらのカクテル、みかんリキュールとオレンジジュース、 ソーダ、それにゼリー2種類入っています。このゼリーは、オレンジジュースとダウンジュルック(コブミカン)のごく少量、もうひとつはココナッツミルクのゼリー。インドネシア現地ではみかんをお酒に入れて飲むそうで、それをイメージしてアラックを少々。曜子さんのレシピ、いつもめっちゃこってる…!
さて、トークではこんな話が飛び出しました。
●サンバルについて
シンガポール、マレーシア、インドネシアの3か国で使われる「サンバル」調味料。ただし、定義は微妙に違う。インドネシアは、唐辛子さえ入っていればすえbてサンバル。唐辛子の入っていないタレはほぼないので、タレ=サンバルといってもいい。料理に必須のもので「ノーサンバル、ノーインドネシア料理」と言ってもいいぐらい。
マレーシアは、唐辛子入りの調味料のなかで醤油系の味を抜いたもの。つまり輪切りの唐辛子を醤油につけたものは「チリパディ醤油」といい、サンバルとは言わない。また炒めてあるものが主流で、生のものならブラチャンが入っているものを指すことが多い。そのため、チキンライスにつける酸味のある生タイプのソースはサンバルではなくチリソースという。
シンガポールも、マレーシアと定義は似ているが、比べるとサンバルの種類が少ない。マレー系の調味料、というイメージ。豆板醤など醤系の文化もあるので、マレーシア、インドネシアほどはサンバルLoveではない。
●ナンプリックって?
日本では「ディップソース」と訳されることが多いが、そんなにハイカラなものではなく本来は伝統食。昔、日本人が梅干しや味噌汁が食事に必須だったように、食卓にかならずあるものだった。家で作ることもあるが、ナムプリック屋台(野菜、鯵、卵焼きも販売)やスーパーでさまざまなナムプリックを売っている。郷愁をそそる食べものといってもいい。ただ最近の若者は馴染みのない人も多い。
●なぜ唐辛子ダレという仕組みがあるのか
民族・エリア・年齢、そして個人で辛さの好みはそれぞれなので、自分で調整できるように「辛さ」を別添えにしている(4ヵ国共通)。子供は食べれないから(4ヵ国共通)。地域ごとで唐辛子の辛味、香り、甘味が違い、それによって様々なサンバルが作られるようになった(インドネシア)
●唐辛子ソースの使い方
辛い料理が好きな人は最初からドバっと入れる(インドネシア)。卓上に用意してあり、好きに加える(タイ、インドネシア)。最後の味つけをするのは客自身なので、料理が運ばれて来たら味見もせず、卓上調味料をえいっとかける(タイ)。ドバっとかけるのではなく、食べ進めるごとに加えていく(マレーシア)。ナシチャンプルの店は店頭に置いてあるが、通常は料理とともに小皿で運ばれてくることが多い(マレーシア)
。麺全般(スープ、炒めともに)に必須(マレーシア、シンガポール)
●そのほかおもしろ情報
インドネシアのサンバル・マンガ・ムダはタイのグリンマンゴーのヤムだった!具だくさんサンバルは、唐辛子ソースというよりもサラダじゃない? (タイ、インドネシア) 若い人の間で、伝統を見直そう、という動きがあり、今、サンバルブームがおきている。多種のサンバルが楽しめる専門店オープン(インドネシア) シンガポールの最近人気のソースは塩卵ソース(シンガポール)
こちら、現地の写真です。左からタイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア。
唐辛子タレ、深い! 4ヵ国に共通して大事な味でありながら、定義や使い方がすこしずつ異なっているのがすごく興味深かったです。この4ヵ国を旅するときは、ぜひタレにも注目してみて下さい。辛いので、まずはスプーンの先につけてちょっと舐めてみて、いけそうなら、料理に垂らしてみましょう。新しいおいしさに目覚めること、保証します!(古川音)
■アジアごはんズとは
浅野曜子(インドネシア料理プロデューサー+フードコーディネーター)、伊能すみ子(アジアンフードディレクター)、下関崇子(カルチャー料理家、ムエタイインストラクター)、古川音(「マレーシアごはんの会」代表)からなるアジアごはん大好きグループ。
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