オランマカン(食べる人)

People アイズディーンさん 日本デビューの歌手

2009年、日本で歌手デビューを果たしたアイズディーンさん。日本でデビューした初のマレーシア人歌手として注目を集め、最近では、故郷マレーシアでも歌手としてイベントに招待される存在に。2010年3月にリリースしたファーストアルバムは、マレー語で「贈りもの」という意味のタイトル「Hadiah(ハディア)」。しっとり歌う恋のバラードは、すぐに口ずさみたくなる耳馴染みのいい曲ばかり(全曲日本語)です。ホイットニー・ヒューストン、リッキーマーティン、ミスチル、スピッツ、山口百恵の歌が好き。哀愁のある歌詞に惹かれる、というアイズディーンさんにインタビュー。(2012年8月3日)


来日前の1年間、日本語の勉強は毎日12時間以上

音: 日本に来たきっかけを教えて下さい。

アイズディーンさん: マレーシア政府が推奨する「ルックイースト政策」(※東方政策。西欧にかわって、アジアの先進国である日本、韓国に学ぼうという政策)で来日しました。今からもう10年前のこと。その頃の僕は、マレーシアを出てみたい、という気持ちが強かった。年中暑い国に住んでいたので、寒い国への憧れもあって。

音: 日本で暮らして大変なことはありますか?

アイズディーンさん: 漢字が難しいですね。魚の名前とか書けないです。クジラ、マグロ、アワビなど、どんな漢字でしたっけ…?

音: 魚の漢字って(笑)。 私もあまり知りません(笑)。

アイズディーンさん: 漢字だけでなく、日本語のニュアンスは難しいです。ルックイースト政策で日本に来た僕の同期は55人。でも現在は、ほぼ全員がマレーシアに帰国しています。やはり日本語で苦労した人が多かった。僕の場合、来日前の1年間、クアラルンプールの日本語学校で勉強。学校が終わったら、家に帰って復習。遊ぶことはほとんどありませんでした。毎日12時間以上は勉強していたと思う。基礎をしっかり叩き込んだおかげで、ずいぶん楽になりました。

音: 日本は住みやすい国ですか?たとえば家の賃貸などは?

アイズディーンさん: 外国人という理由で家が借りれないことはよくあること。いつものことなので、もう慣れました。外国に住んだ経験を持つオーナーさんは、なんの問題もなくOKなんですけどね。ほかには、JRのSuicaをクレジット機能付きにしたら、僕の名前が長すぎてエラーになってしまったり(笑)。例外的に省略形で個別対応していただきました。

音: 出身はマレーシアのどこですか?

アイズディーンさん: クアラルンプールの中心街から車で約20分、バトゥケイブというヒンズー寺院の近くです。その地域は、マレー系、中国系、インド系と3民族が同じぐらいの人口比率で暮らしていて、たとえば小学校で隣の席に座っていたのはインド系マレーシア人、塾で隣の席に座っていたのは中国系マレーシア人。僕はマレー系なので、初めは中国系、インド系の人たちはどんな人なんだろう、と思っていました。でも友達になってみたらどうってことない。毎日遊んで、お互いの実家に遊びに行ったりしていましたね。

音: マレーシアでも音楽活動をしていましたか?

アイズディーンさん: 活動というほどではありませんが、高校のころは音楽部の部長でした。音楽部といっても、コーラスに打楽器の伴奏をつけたもので、僕はマレーシアの民族楽器であるコンパン(マレーシアの太鼓)を担当。ドンカン、ドンカン、ドゥドゥカッドゥドゥカッというリズムは、今でも体に沁みこんでいます。

歌詞に体験談は…? 僕は、恋愛体質かもしれません

音: 日本デビューのきっかけを教えて下さい。

アイズディーンさん: 大学で音楽サークルに入るつもりでしたが、留学生は日本語の学習や日本文化の特別授業が必須科目で、サークルの時間と合わない。仕方なくライブハウスに遊びに行っていたら、そこで音楽関係の方と知り合いになり、僕の歌を聴いてくれたんです。母は、僕が日本で音楽をやっているということは知っていましたが、まさかデビューするとは思っていなかったようで、マレーシアの新聞に僕のニュースが載ったときはびっくり! わが家は新聞を7紙取っているのですが、その全部に僕の記事が載ったので驚いていました。

2010年3月にリリースしたファーストアルバム「Hadiah(ハディア)」

音: 曲を作るのはおもしろい?

アイズディーンさん: 曲を作るのは楽しいです。でも歌詞は大変。歌詞を考えるときは、身を削る思いです。たとえば、昔の歌謡曲、そうですね、山口百恵さんの秋桜の情緒を参考にしたりしています。ときには、歌詞が突然頭の中に降りてくることも。そのときは感極まってしまって、号泣しながらスマホにメモします(笑)。

音: 歌詞にはアイズディーンさんの体験談もありますか?

アイズディーンさん: あるかも、いや、無いかも。僕はけっこう恋愛体質だから。でもいつも一緒にいたい、というタイプでもないですね。女性は自立しているほうが好きです。

音: たとえば、旅の行き先をちゃちゃっと決めてくれるような?

アイズディーンさん: それはイヤかも(笑)。僕に相談せずさっさと決めちゃうのは困るなぁ。だって一緒に相談している時間が楽しいでしょう。

音: 突然ですが、アイズディーンさんの好きなマレーシア料理を教えて下さい。

アイズディーンさん: ロティチャナイです(即答)。あ、サテもね! サテは、屋台のサテを一度冷凍して、食べるときにそれを解凍したものが好きです。よかったらやってみて下さい。タレがしみて、うまいですよ~。僕は6人家族ですが、いつも100本ぐらい屋台で買って、食べきれなかったサテは冷凍していました。ちなみに100本焼くのを待つのは時間がかかるので、事前に電話予約をが必須。ほかには、日本に来てから初めて知ったインチケビン(マレーシア風鶏のから揚げ)。八丁堀のマレーシア料理店「マレーカンポン」の看板メニュー、最高です。マレーシア料理が恋しくなったら、マレーカンポンに通っています。

音: 今後の活動を教えて下さい。

アイズディーンさん:  今は、仕事と音楽活動の両立でとても忙しいけど、すごく充実しています。毎日ワクワクする。正直に言うと、音楽を止めようかな…と思った時期もあったんです。でも今は、あきらめずにやり続けると決めた。僕はやっぱり歌が好きだから。そして将来は、音楽を越えて、マレーシアと日本を結ぶようなことをやってみたいです。

音: それはマレーシアが故郷だから?

アイズディーンさん: うーん…。僕は青春時代を日本で過ごしています。ということは、日本も僕にとって故郷なんです。2つの故郷をつなげる活動は、僕にとってごく自然なことです。

音: 今日はお忙しいなか、ありがとうございました。これからも、応援します。

オフィシャルウェブサイトはこちら


音の感想: 爽やかでかっこよくて優しくて男前。アイズディーンさんを表現すると、まさしくこの言葉がぴったり。気取らずいつもオープンで、「1度凍らせたサテが最高にうまい!」と語ってくれたときは、目がキラキラと輝いていました。日本語は完璧、若者言葉も自由自在。青春時代を過ごした日本が、アイズディーンさんのアイデンティティの一部になっていること、たしかに感じました。人は、生まれた故郷、過ごした土地、囲まれた環境によって、いろんな可能性を積み重ねていく。それはじぶんだけの経験で、各自それぞれに意味があり、自分が選んできたことで、誰にもまねできない。そんなことをアイズディーンさんと話していて思いました。アイズディーンさん、これからも応援しています!

関連記事

  1. People 中島直樹さん 元・青年海外協力隊
  2. People 三浦菜穂子さん マレーシアの達人
  3. People 川畑あるまさん 元・日本ハラール協会
  4. People 渡辺那美さん 株式会社ロイヤルセランゴール代表取締…
  5. People 橘雅彦さん 元JADプログラム教員
  6. People 小川ハニサさん 日本で暮らすマレーシア人の食生活
  7. People 尾池富美子さん メイあさかセンター代表理事
  8. People アクマルさん マレーシアハラルコーポレーション代表…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

  1. コクと香りNo.1 ! マラッカで食べたニョニャ・ラクサ
  2. ペナン・レマッ・ラクサ Penang Lemak Laksa
  3. トレンガヌで食べたラクサムはどことなく洋風
  4. ジョホール・ラクサはスパゲティの麺に魚ソースたっぷり
  5. 香り豊かなサラワク・ラクサ、驚きのスープ活用術
  6. コタキナバルで人気のラクサの店「イーフン」は創業39年
  7. ラクサ・テロー・ゴレン・ブルサラン Laksa Telur Goreng Bersarang
  8. マレーシアの多様なご当地ラクサは、4つの定義をおさえよう!
  9. マレーシアの郷土菓子は圧倒的に緑色。5つの特徴を解説
  10. ペナンの郷土菓子は、もっちり、やわらかいのが特徴
PAGE TOP