マレーシアに住んでいたときは、百花繚乱のマレーシア料理を心ゆくまで堪能していた私。でも、ふと疑問が湧きました。日本に住んでいるマレーシア人はどんなご飯を食べているのだろう……?早速、日本に住んで18年のマレーシア人ハニサさんにインタビュ~。(2011年10月7日)
「昔は近所のニワトリをもらって、先輩がえいっ!と」
音: 日本にいらしたきっかけは?
ハニサさん: マレーシア政府のルック・イースト(※マハティール元首相が提唱した政策。西のヨーロッパではなく、東の日本や韓国を見よ、として、日本への留学や日本企業の誘致を積極的にサポートした)政策の一環で、新潟の大学に留学しました。この学校には、多い時期で40人くらいのマレーシア人の学生がいましたよ。最初の1年は、日本語に非常に苦労しました。留学前にマレーシアのマラヤ大学で2年間日本語の勉強をしましたが、新潟の方言やイントネーションはまったく教わっていなかったので(笑)。ひたすら聞き取り専念し、2年目からはなんとか。今年で日本に暮らして18年。主人は日本人で、息子2人、娘1人の5人家族です。(写真は、ハニサさんと娘さんのアイミさん)
音: ハニサさんはマレー系マレーシア人(※イスラム教徒。豚肉・酒は禁止、ハラルにのっとった肉のみ食べられるなど、宗教上の食のルールがある)なので、日本での食事は大変でしたか?
ハニサさん: 日本に住み始めた頃はハラルのお肉が手に入りにくくて。月1回、友人と共同で神戸の業者から取り寄せていました。また、生きているニワトリを近所の方から分けてもらって、自分たちでさばくこともありましたね。
音: すごい!ニワトリがさばけるのですね。
ハニサさん: カンポン(田舎)出身のムスリム(イスラム教徒)は、ほとんどできますよ。自分たちで解体すればハラルなので、おいしく食べられますからね。ただ日本では、自分でニワトリをさばいて食べる、という概念が無いので、知らない人からは怪しがられました。聞いた話ですが、昔、神戸に住んでいたムスリムが「どうしても神戸牛が食べたい!」となり、仲間を集めて神戸牛を1頭購入!自分たちでさばいて食べたそうです。でも今は、ハラルの和牛が購入できるようになったんですよ。
音: マレーシアハラルコーポレーションより宮崎産のハラル和牛が発売されたのは、ここ2~3年の話題ですものね。
ハニサさん: 和牛を食べたい、というのは、ムスリムの願いでした。昔の輸入のハラル牛肉は硬いばかりでおいしくないの。おのずと食卓には鶏肉ばかりが並び、子どもから「また鶏!」と文句を言われていましたから(笑)。
「ハーブは庭で育てています」
音: マレーシア料理二必要なハーブやスパイスはどのように手に入れていますか?
ハニサさん: スパイス類は御徒町のアメ横で買うことが多いかな。最近は、近所のアジア食材店でも調達できます。また、よく使うハーブは庭で育てています。レモングラス、こぶみかん(ライムの葉)、ラクサリーフ、カレーリーフ、パンダンリーフ、ペガガ、タイ産バジルは庭から調達します。
ハニサさん: 実は息子のアイニンは、マレーシア料理が苦手で(笑)。ココナッツミルクの味がダメなんです。ですので、わが家の料理は和食がほとんど。定番は、かぼちゃやサトイモの煮物、ひじき、お味噌汁。でも、日本の調味料を買うのは大変でした。よくチェックしないと、ドレッシングや調味料に豚エキスが入っているんです。日本語が読めないときは何も買えませんでした。マレーシア料理が恋しくなると、せっせと手作りします。ラクサ麺は乾麺で保存しておくより、食べたいときに手作りしたほうがおいしくて楽。先日はハリラヤのお菓子、クエゴヤンを作りました。
星形が可愛い「クエゴヤン」。マレーシアの伝統的なお菓子で、右の型をつかって、生地を揚げる。パリッとした食感のせんべい、ほんのり塩味
お菓子作りが得意なハニサさん。ハリラヤ(断食明けのお祭り)用のお菓子も手作り
「吉野家でも注文はウナギ」
音: 外食で苦労されることは?
ハニサさん: 小学校の給食ですね。子どもたちもムスリムなので、メニューをしっかりチェックして、お肉が出るときは、替りのお弁当を持たせています。でも突然メニューが変わったときは大変。「母ちゃん、今日食べれなかったー。腹減ったー」と怒りながら帰ってくるときもたまにあります。
音: 旦那さまも豚肉禁止?
ハニサさん: はい、そうです。もし食べたら、臭いで分かりますからね。ハラルとは関係ないのですが、最近やっと彼がタバコを辞めてくれて、感謝!だって、もし1年タバコを吸わなかったら、メッカに行けるくらいのお金を遣ってましたもの(笑)。
音: 外食はお魚中心ですか?
ハニサさん: 外食するのは、おもにお寿司屋さん。マグロのトロが大好き!魚系であれば問題ないので、吉野家でもウナギを食べます。日本の食事で苦労した、と思うことはあまりないんです。マレーシアのスパイスが買えないことも多いのですが、実家に帰ったときに調達したり、適当に自分で作れますし。臨機応変に対応すれば、大丈夫。今、食べたいマレーシア料理はね、アパンバリ!皮がパリパリで、中にコーンやピーナッツの餡が入っています。マレーシア料理はほとんど作れるのですが、これは機械が無いと作れなくて。あ~!食べたくなってきました!
音: 私もです!食べたくなってきた~(笑)。日本の生活をしなやかに楽しんでいらっしゃるハニサさん、ステキです。今度ぜひマレーシア料理を教えてください!
この記事へのコメントはありません。