「The Canteen by Chef Adu」 Authentic Malaysia Restaurant in KL
フレッシュで濃厚。マレー料理の神髄を体感できる
15年間ヨーロッパで料理の腕を磨き、母国に帰国後はTV出演や料理本出版など多方面で活躍中のマレーシア人シェフ、アドゥ氏。みずからを究極のマレーシア人と称し、定義にしばられない「モダン・マレー・アジアン」という独創的な料理をうみだしたシェフが、あえて昔ながらのレシピに立ち戻って2016年にオープンしたのが、このレストラン。ようやく、念願かなって、訪れることができた!
ムルデカ広場の前、テキスタイルミューアジアム(国立織物美術館)内の1階(マレーシアではグランドフロアと表現)。エントランスから入り、受付右横の通路を直進し、突き当たりを左に曲がった奥に、レストラン「キャンティーンbyシェフアドゥ」はある
前置きです。マレーシア料理のなかで、マレー料理とは
(マレーシア料理をよくご存じの方は、読み飛ばしてください) マレーシアにはマレー系、中国系、インド系のおもに3つの民族が暮らしていて、それぞれに得意な料理というものがある。家庭で、屋台で、レストランで、それぞれの味が披露されるが、食べる方は、民族関係なく、その日の気分で好きな料理を選んでいる。日本人が、和食、イタリアン、韓国料理を気分で選んでいるのと同じこと。
各料理には様々な味の特徴があり、そのなかでマレー系の料理(マレー料理)は、“家で食べるのが一番おいしい”とずっと思っていた。つまり、家庭料理だ、と。
5年以上続けているマレーシア料理教室で、マレー系の先生が料理をする姿を何度も何度も見ていると、ひとつの特徴があることに気づく。それは“手”を使った工程がとても多いこと。肉をマリネしたり、唐辛子ソースを作るとき、先生はかならず手でもみこむ。「生手(なまて)を使うのが一番いい」と先生は冗談ぽくいうけれど、手の温度、湿度、感触は、きっと味に伝わる。ましてや、マレー料理は手で食べる料理なのだから。
手を使って調理をするのは、家庭では簡単かもしれないが、レストランではいろいろと難しいこともあるだろう。だから、家で食べるほうがおいしいのでは、と考えていた。(前置きおわり)
ところが、ここ「キャンティーンbyシェフアドゥ」は素晴らしかった。 思い出すとまた食べたくなる。友人みんなに食べてもらいたいと思う。そういう味が、この店にはあった。
店の特徴1 魚の身を手でほぐし、手で料理をしていた!
ジョホール・ラクサ(Laksa Johor)18.50リンギット。多種のハーブを加えた魚のソースをスパゲティにからめてある
さっそく(お待たせしました!)、ここで提供している料理を紹介しよう。
看板料理は、ジョホール・ラクサ。日本でもおなじみのラクサの1種で、ジョホール出身のアドゥシェフの故郷の味。麺に、スパゲティを使うのが特徴。
ソースがひじょうに凝っていて、味の核となるのは、太刀魚(Ikan Parang)とイワシの2種の魚。うこんの皮と一緒に弱火でゆでたら、骨と身に手でわけ、骨はブレンダーでペースト状にする。ここに、レモングラスやガランガーなどの香草を加えてさらになめらかにし、ほぐしておいた魚の身と一緒に煮み、グレービーなソースに。
スパゲティにソースをあえたら、ラクサリーフ、スイートバジルなどの香草、玉ねぎ、キュウリ、もやしなどの生野菜をトッピングし、食べる直前にライムをしぼって、ようやっと、いただきます! 唐辛子で作るサンバルソースを味のアクセントに加えれば、味は無限に広がり、香りは幾重にも重なる。これは、うまーーーい!
ひとつの料理にいくつもの工程をこなすこだわり、そして、魚の骨を取りだすという、手の手順があることを聞いて、おぉ!!と思った。料理人の手から伝わる思いが、たしかにこの皿に含まれている気がした。
店の特徴2 味を表現するなら「フレッシュで濃厚」
さて、この店で提供している料理は、たったの6種(+デザート2種、飲み物は多数)。種類が少ない分、どの料理もていねいに手作り。(だから少し待ち時間が長い)
マレーシアの国民食、ナシレマッ(Nasi Lemak Bunks Daun Pisang)4リンギット。牛肉の煮込み料理、ルンダン・ダギン(Rendang Daging Mak Moon)6リンギット
ナシレマッは、バナナの葉に包まれた持ち帰りスタイルで提供される
たとえばナシレマッ。ご飯を炊くときにつかうココナッツミルクは、缶詰ではなく、しぼりたてのフレッシュなものを使用している。「当たり前だから」とシェフは言うが、日持ちのしないフレッシュなココナッツミルクをレストランで使う、というのは挑戦だ。
また、米がふわっとやわらかく炊きあがっている。これは、うるち米ともち米を9対1の割合で混ぜているからで、パラパラの食感に仕上がっているのに、渇いた感じがしない。牛肉のルンダンは嚙むごとにジューシーで、ずっと嚙んでいたい気分だった。
店の特徴3 恋に落ちたご飯サラダ、ナシクラブ!
炊いたご飯に、刻みハーブを混ぜたナシクラブ(Nasi Kerabu)22リンギット。上にのっているハーブのペガガはほろ苦く、大人感もある
個人的に“マレーシア版ちらし寿司”とよんでいるナシクラブ。マレー半島東海岸の名物で、パラッとしたインディカ米(ここでは赤米と玄米の2種を使用)に、野菜やハーブを混ぜ込んだもの。ハーブの種類を聞けば、ラクサリーフ、カフィアライムリーフ、ブンガカンタン、ミント、スイートバジルなど多彩!
こんなにいろんなハーブを使っているのに、それらがちゃんとまとまっているのが不思議。みんなでそれぞれおしゃべりしているのに、それを誰かが歌にしているような、そんな感じだ。その指揮者的な存在なのは、全体にからめてある特製ソース。ライムのしぼり汁とアヒルの塩卵の黄身で作ったものだそうで、マヨネーズのようなクリーミーなコクがある。おいしいなぁ。こんなにフレッシュで、鮮烈で、それでいて濃厚なナシクラブを初めて食べた。
オンデオンデケーキとスモーキーバナナ
スモーキーなバナナブラウニー(Brownies Pisang Salai Nostalgis)8リンギット、オデオンデケーキ(Kek Onde Onde)13.50リンギット
デザートも驚きの2種。バナナブラウニーは甘さゼロ。燻製のようないぶした香りが全体に漂っていて、大人向け。ブランデーとかに合いそう。一方、遊び心満点のオンデオンデケーキは、パンダンリーフの香りをつけたスポンジに、濃厚なココナッツミルク入りのクリーム。そこに、香り豊かな椰子砂糖(グラマラッカ)シロップがたっぷりかかっている。まさに、オンデオンデケーキだ~!このアイデア、すばらしい!
(左)マレーシアで暮らす友人も感激の味! ひとりでお茶をするにも快適な店内。(右)アドゥシェフ(中央)と記念撮影。アドゥシェフに料理に大事なことは?と聞くと、間髪いれず「Cooking from Heart」と答えてくれた
長年イギリスで暮らしたアドゥシェフは、故郷マレーシアの伝統を新しい価値ととらえ、それを新しい視点で紹介している、と感じた。ハーブやスパイス使い、煮込んだり燻製したりと、さまざまな食材や調理法を多用しているのに、それらがちゃんとまとまっていて、芯の通った味だった。
ジョホール出身のAduシェフ。アドゥシェフのインタビュー(生き方を皿の上に表現する)はこちらより
※1リンギット25円(2017年4月24日時点)
■The Canteen by Chef Adu
※ 現在、休業中。新店舗ができましたら、またお知らせします! (2018年5月4日 データ更新)
Now this restaurant closed. When Chef Adu open new restaurant, we will announce soon !!
住所:National Textile Museum, Jalan Sultan Hishamuddin, Kuala Lumpur
電話:+60 010-422-3014
営業時間:9:00~18:00(※16時からはカフェメニュー)
定休日:なし
席数:20席ぐらい
アクセス:LRTマスジットジャメ駅から徒歩10~15分、車の場合はセントラルマーケットの駐車場より徒歩7分
Web http://www.chefaduamran.com/p/the-canteen-by-chef-adu.html
この記事へのコメントはありません。